ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

居眠りの旅が、くれたもの


はじめまして。島さんからバトンを受けて、今回初めてリレーブログに加わりました、東京の佐藤英子です。子どもは小学1年生の息子がひとりいます。
どうぞよろしくお願いいたします。

島さんが毎朝、たくさんの思いを込めてお子さんへ贈る「行ってらっしゃい」のエールは、お子さんたちを守り続けた言霊だったのでしょう。改めて親の愛の深さに心を動かされました。
かくいう私も毎朝、島さんと同じような思いで、息子を「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出すのですが、1年生になったばかりでまだ身体が小さく、まるでランドセルが歩いているような後ろ姿が見えなくなると、無性に心配になるのです。
無事に「お帰りなさい」言えますように、と。

息子の小学校は家から遠く、毎日バスと電車を乗り継いで通っています。最近は通学に慣れてきたとはいえ、やはりまだ6歳。親は気が気ではありません。
そんな私の気持ちをよそに、これまでに息子は慣れない学校生活と電車通学で疲れるのか、帰りの電車で居眠りをして、降りる駅を乗り過ごしてしまうことがありました。その度に親切な方に助けられて無事に帰ってくるのですが、後から話しを聞かされる私は、本当に生きた心地がしません。同時に我が子に手を差し伸べてくださった方への感謝で、涙が止まらなくなることもありました。
しかも息子は事態に対応することで精一杯のようで、お礼をきちんと言えずに後悔していることも、親としては気がかりでした。

さすがに息子にも自覚が出てきたのか、ようやく電車で乗り過ごすことはなくなり、ほっとしていたのも束の間。夏休み目前で、母子ともに気が緩んだ時期でもありました。
居眠り再発。しかも今度は電車ではなく、バスでした。

学校の校則で携帯電話の所持は禁止のため、GPS端末を携帯させていましたが、この日ばかりは携帯電話を持たせなかったことを激しく後悔するほど、気が動転しました。
GPSが示す息子の位置が、バス停で帰りを待っている私から、どんどん離れていくのです。しかも息子が乗ったバスの終点は、自宅からかなり遠い地域まで運行するものでした。
「起きて! 起きて!」
心の中での叫びもむなしく、GPSは知らない町を示していました。もう祈るしかありませんでした。

息子が帰ってくることを信じて反対車線のバス停へ移動し、GPSが示す息子を見続けながら、待つこと1時間が経過した頃でした。
到着したバスは、仕事帰りの人たちで混雑していましたが、窓の端にちらっと白いピケ帽が見えた瞬間に、思わず涙が溢れてきました。
でも「泣くのは息子に会ってから」と自分に言い聞かせ、それでも滲んで視界がぼやける目で、降りてくる人を必死に追っていった最後に、ピケ帽をかぶったランドセルが降りてきました。目を真っ赤にし、頬にいく筋もの涙の跡をつけた息子は、私を見た瞬間、抱きついて声をあげて泣き出しました。

息子が無事に帰ってこられたのは、隣に座っていた女子高生が、わざわざ乗っていたバスを一緒に降りて、帰りのバス停までついてきてくれたからでした。
それを聞いて、心の底から感謝の思いが溢れました。
「そのお姉さんに、きちんとありがとう、言えたの?」
「今度はちゃんと言えたよ。でも泣きながらだったけどね」

息子は寝過ごした数だけ人の優しさに触れ、その度に沸き起こる「ありがとう」という気持ちに気づき、それを言葉で伝える勇気を得たようです。
皮肉にも、居眠りから始まった旅のおかげで、彼はずいぶんと逞しくなったような気がします。

何はともあれ、無事に「おかえり」が言えて、感謝!
皆さん、本当にありがとうございました。

では次回は神奈川の杉本さんへバトンを渡します。
よろしくお願いします!

東京都/佐藤英子 





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