ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

怖い先生


こんにちは。東京の佐藤です。
ゴールデンウィーク真っ只中ですね。新緑もみずみずしく、生命の躍動を身近に感じる季節です。

島さん、お嬢さんのお誕生日、おめでとうございます。
素敵なひと時を過ごされたことでしょう。子どもの誕生日は自分のとは違って(笑)、何回訪れても違った感動がありますね。
いつの間にか立派に成長されたお嬢さまと島さんのように、私も息子と、いつまでも互いを尊重しあえる親子関係を築けたら幸せです。

さて、新学期が始まってひと月が経ちました。小学3年生に進級した息子は、クラス替えでお友達も担任の先生も変わりました。昨年のちょうどこの時期のブログに、息子が学校に行きたがらないことを書きました。環境の変化についていけてない我が子に気を揉んだことが、まるで昨日のことのようです。というのも、昨年と同じように、今年も息子は「学校に行きたくないなぁ…」と口にしているからです。
理由は、算数の先生が怖いからなのでした。

その先生は中年の男性で、上級生のお母さんの噂話に常に登場する、子どもだけでなく保護者も恐れるほどの存在のようです。噂なので恐ろしさにバイアスがかかっているとは思いますが、「担任になってから、チック症状が出た子がいる」とか、「登校拒否になった子もいる」といった類のものばかり。耳にするたびに、否が応にも不安な気持ちが煽られて、クラス替えの担任の発表が出るまで、親の私が落ち着かない日々を過ごしました。

幸いにも息子は、その怖い先生のクラスは免れたものの、噂の先生は算数の担当のため、毎日1時間ある算数の授業で向き合うこととなりました。

初日の授業を終えた息子は、家に帰って来るなり
「ママ聞いて! もうさ、算数の授業は、みーんな、こんな感じだよ!」
と言って、体をカチンコチンに固めて机に向かっているポーズをしました。
その姿が滑稽で、私は思わず「ぷっ」と吹き出すと、
「本当だよ! みんな先生が怖すぎて、黒目だけで先生の様子を伺って、体はピクリとも動けないんだからっ!」
と興奮して訴えてきました。
きっと得体の知れない人物を怒らせないよう、みんな必死なんだろうなぁ…
私は授業風景を想像すると、懸命な息子が可愛らくしく見えました。

「そっか、じゃあこれから毎日大変だ。でも先生のどんなところが怖いと思ったの?」
噂の真相に迫る気分で息子に聞いてみました。
「なんかさ、教科書を立てて見ろとか、線を引くときは必ず定規を使わないといけなとか、教室は一方通行だとか、怖い顔して怒鳴るんだよ」
「何もしてないのに、怒鳴ったりはしないでしょ」
「でもすごい強い口調で言うんだ」
息子は本当だよ、信じて、という目をしました。

なるほど。噂の先生は確かに怖いのかもしれない。
でももしかすると先生独自のルールがあって、彼はそこからはみ出した子どもを注意しているだけなのかもしれない。
そう予想しながら、自分の過去にも恐怖の授業があったことを思い出しました。

中学2年生の時の数学の男の先生でした。小太りでパンチパーマをかけた容姿だけでも威圧感があるのに、何が気に入らないのか、いつも授業中に突然に血相を変えて怒鳴り散らし、その度に教室は凍り付きました。
当時、先生が何に反応して怒りのスイッチが入るのかが、私たち生徒には全くわからなかったので、数学の授業は、それは本当に憂鬱で、毎回ビクビクものでした。

そうだ。確かその翌年に担任になって、この世の終わりだと嘆いたなぁ…

私は古い記憶をたぐりよせると、忘れていた出来事が蘇りました。
その経験をちょっとだけ息子に分けてあげようと思いつきました。

「ママもね、すごーく怖い先生の授業、我慢したことあるよ」
すると息子は目を大きく見開いて、「本当に?」と聞いてきました。
「うん。でも途中から怖くなくなった。先生と仲良しになったから」
息子はポカンとして、友達でもないのに、どうやって仲良しになったのか知りたいと言いました。
「ママは先生を観察したの。どんなことをすると怒るのかなあ、とかね。怖いばっかりじゃないはずだと思ったの。面白いところはどこかな、優しいところはどこかなぁって、授業のたびに探す努力をしたの」
「そしたら?」
「そしたらね…優しいところがあったの(笑)。ママがお友達から仲間はずれにされたことがあってね。一人ぼっちでいる時に、その先生だけがいつも声をかけてくれたんだよね…」

その後担任になった数学の先生は、私が休み時間に寂しげに一人でいる時に、よく話しかけてきてくれました。いつも決まって「今日は雨だな」とか「寒いな」といった天候の話しで、ぶっきらぼうでぎこちないものだったけれど、それだけで心があったかくなりました。

「ママ、よかったね。いいなぁ」
息子は羨ましそうに言いました。
「うん。だからママみたいに、怖い先生を怖いままにしないで、違うところを探してみるといいよ。面白いところとか優しいところとか、きっとあるはず」
「えー、あるかなぁ…うーん。笑い方がちょっと面白いかも」

この日から息子はさっそく怖い算数の先生の、違う顔を探し始めたようです。
たくさん見つかる頃には、息子はきっと今よりも少しだけ、逞しくなっていることでしょう。

それでは次回は愛知の児島さんです。
楽しい連休をお過ごしですか?

東京都/佐藤英子 





No. PASS