活動記録

プログラム当日の様子や概要などをハートフルコーチがお伝えします

第34回ハートフルクラブ


7月2日(日)、第34回ハートフルクラブが開催されました。
秋田県東成瀬村教育委員会委員長の鶴飼孝さんをお招きして「子どもの可能性を開く教育〜家庭でできる取り組み」と題して講演をしていただきました。

東成瀬村は人口2600人、山林原野が93%を占める自然豊かな所です。秋田県の東南端にあるこの小さな村は「学力の高い村」として教育関係者、メディア等の注目を集めており、国内はもとより韓国やモンゴルなどから訪れる視察者の数は年間600人を超えています。
全国に先駆け小学校での探求型授業を実施するなど、国内外から注目される東成瀬村の教育への取り組みを聞かせていただきました。

鶴飼さんのお話はとにかく軽快で楽しく会場には絶えず笑い声が起りました。柔らかい声と時折混じる方言が人柄と相まって参加者はすぐに引き込まれていきました。

お話を聴かせていただいた中で、強く印象に残ったのは人との関わりについてです。
まずは「人のシャワー」。
村にある小学校・中学校はそれぞれ1校ずつ。東成瀬の教育の柱はそれを生かした「小中連携教育」です。小中合わせて教員は30人ほどで教職員だけでは手が足りないところは地域の人の力を借りているとのこと。例えば「キバナコスモス」の植栽や採種では、子どもたちと地域の人たちみんなで力を合わせて作業をするそうです。
鶴飼さんは「小1から中3までの子どもたち、教員、地域の人たちとの活動を通し、多くの人と関わることで自分と異なる生き方・考え方など多様な価値観にふれます。そうすることで自分を見つめ、自分をわかり、新しい価値に気づいていく機会になる。私は「人は人のシャワーを浴びて人になる」と思っています」と話してくださいました。

もうひとつは子どもに「安心感と信頼感」を与えること。
人を笑ってはダメ、バカにしてはダメ。失敗したりできなかったりしても笑わない。これは小1から力を入れて教えているそうです。温かい人間関係のなかで、子どもたちは自信をもって発言したり発表をしたりします。
「その子の本当の姿が現れる場面で恥をかかせてはいけない」、ということを大切にし、失敗したときは、発表の仕方などについて丁寧に繰り返し教えているとのことでした。

後半は当法人代表・菅原裕子を交えて参加者からの質問に答えていただきました。
「子どもの勉強に親がどう関わればいいか?」という問いかけには、勉強の中身について何か言うよりそばにいて見守るのがいい。勉強していることがいいんだよ、勉強は大事なんだと伝えていくこと。そして子どもが学びに興味・関心を持てるように親は五感にふれるような体験・経験をさせてあげることが大事。とアドバイスをいただきました。

鶴飼さんは学力を上げるための「これぞ」や「これさえあれば」という決め球はないとおっしゃいます。挨拶をする・自分の仕事はきちんとやる。そういう「当たり前のことを当たり前にできる子ども」を育てるというのが学力向上の基本的な考え方なのだと。
そして最後に「子どもたちには、今生きていること、この村に生まれたこと、この村で教育を受けたことに自信と誇りをもって、将来を切り開いていってほしい」と話された鶴飼さんに、教育を通して子どもたちを慈しむ温かな思いを感じました。

鶴飼さんのお話を聴けば聴くほど、東成瀬村の学力向上の土台は「人間教育」なんだと強く思いました。
多様な価値観にふれるなかで育つ、自分を他人をありのままに認めていく柔軟性や客観性、温かい人間関係の中で生まれる思いやりの心や自信。たくさんの人にふれ、たくさんの体験から人間性が育まれています。小さなときからそれらを教えていくことがいかに重要かということがよくわかりました。そしてこの土台があるからこそ、子どもたちがいきいきと学ぶことができるのだろう。そんな思いを抱いた時間となりました。

ハートフルコーチ・上村明美 







2017年07月09日(日) No.138 (ハートフルクラブ)

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