がんばりましょ!
加藤くりさんから、初バトンを受け取った新潟の櫻井美奈子です。新潟県のまん中あたりの加茂市に住んでいる明るく元気なおばちゃんです。これからしばらくよろしくお願いいたします。
クリさんが、お母様の若かりし頃や新婚時代のお話を聞くのが大好き!というお気持ちわかります。
私も義母の女学生時代の話やバリバリ仕事をしていたころの話を聞くのが好きです。
義母は、今年で96才。83歳まで現役の女医でした。私が嫁いだのは義母が68歳の時で、その頃は現役
バリバリ! 自宅兼診療所は、毎日患者さんと看護婦さんと薬屋さんの若い営業さんらのお喋りで、それは賑やかでほのぼのとした日常が流れていました。
明るく前向きな『さくらいセンセ』は、女医という事もあり、地域の子どもからおばあちゃんまで女性陣に慕われ、閉院して10年以上たった今でも、私は、「先生はお元気ですか?」と買い物中にかつての患者さんに声をかけられます。みなさん、恐る恐る聞かれるのが面白いです。なんせ御年96才ですから、元気な方が珍しいですからね。
まだまだ体力気力食欲に満ち溢れている義母ですが、閉院した頃より始まった認知症が進み、今は家族の事もわかったりわからなかったり。季節や時間、今どこにいるのかなどは、全くわからないようです。仕事柄、人に囲まれおしゃべりすることが好きな義母なので、今は施設に移り、大勢の人と一緒に暮らしています。
私は時折、義母の大好きな紅茶をポットに入れて、数種類のお菓子を持ち、施設の義母の部屋へお茶飲みに行きます。義母にとって私は、「誰かわからないけどいると安心する人」という位置づけのようです。本当に時々ですが「美奈子さん」と呼んでくれる時もありますが、「あなたは、どちらのお部屋ですか?」などと聞いてくることからも、もう私を家族と認識してはいないかもしれません。ですが、今でも義母は、私にとって人生の学びを授けてくれる大切な人です。
先日、人付き合いに疲れむしゃくしゃした気持ちで尋ねた時は、
「いつも人の後ろにいるだけではつまりませんよ。遠慮してばかりではいけません。人間我慢しないでやりたいように生きた方がいいですよ」
と、励ましてくれました。いつものように、お菓子を食べながらおしゃべりしていただけなのに、まるで、私の胸の内を見透かしているような一言に、
「そうですよね、お母さん」と、私は思わず涙がこぼれそうになりました。
この時ばかりではありません。先日浪人中の次男と尋ねた時は、
「あなたは、いい子ですね。あなたは大丈夫ですよ。でも、もう少し頑張りなさい」と、優しくもタイムリーな一言を、ぽそっ…と次男に言ってくれたのでした。
次男はびっくり! 折しも前日の模試で大失敗し、かなり落ち込んでいた時でした。施設を出た後、彼は「今日来て良かった。モチベーション上がったわ〜。おばあちゃんすごいね。仙人の域だわ」と、しょげていた顔が前向きで明るい顔に変わっていました。
義母はいつも前向きです。少しの事ではめげません。思えば、元気な頃より義母の口癖は「がんばりましょ!」でした。患者さんにも、友人との電話口でも、最後にいつも必ず、「がんばりましょ!」と相手を勇気づけていました。
義母が認知症になって13年。ずっと傍らで移り変わりを見てきましたが、生きていく為に必要なこと以外は、少しずつ、でも確実にそぎ落とされ、最後は自分の人生に大きな意味を持つものだけが残ったように思います。人を励ますこと、勇気づけることは、義母の人生で大きな意味を持っているのだと思います。きっと、女医として母として、自分自身をも(がんばりましょ!)と励ましてきたのかもしれません。
では、バトンを千葉の藤野さんに渡します。一緒にがんばりましょ! 藤野さん!
新潟県/櫻井美奈子
2016年10月17日(月)
No.271
(日記)