ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

オーケストラと娘


神奈川の松下です。
秋田さんの「要望」と「要請」のお話、身につまされました。
私もついつい分かってほしい、と最後まで言わずじまいになりがちです。
はっきりお願いすることが、相手を信頼していることにもつながるのですね。

さて、私の趣味はヴァイオリンを弾くことです。
子どもの頃から長く弾いていて、一人で弾くのも、オーケストラのように皆で演奏するのも大好きです。私の生きる活力でもあります。

先日、2年半ぶりに所属しているアマチュアオーケストラの演奏会に出演しました。
今回はどの曲も弾いたことがなく、しかも難曲だったため、週末に時間をかき集めて必死に練習し、日曜夜のオーケストラ練習に備えました。通勤時間には練習の録音を聴きながらスコア(総譜)をチェックし、本番に向けて5か月間、練習を積み重ねてきました。

私が一心不乱に楽器と向き合っていることが、娘には寂しく不満だったのでしょう。仕事で不在なのはともかく、趣味で自分をほっぽらかしているなんて、と文句たらたらです。
「ヴァイオリンと娘である自分と、どちらが大切なの?」と、今まで聞いたことのなかった質問まで飛び出しました。

そんなに寂しい思いをさせてしまって申し訳ない、という気持ちがある一方で、
私にとっては久しぶりのオーケストラです。
仲間と一緒に音楽を奏でる瞬間は私にとって無上の喜びであり、聴きに来てくれる人や仲間のためにも、最高の演奏をしたい、という思いが強くありました。

それでも娘から、「一番ゆっくりできるはずの日曜日の夜に、家にいないなんてひどい」「オーケストラ嫌い」と言われたのは、さすがに堪えました。

そういえば、私も子どもの頃、平日は仕事で忙しい父親と、週末に一緒に遊ぶ時間を楽しみにしていました。
その大切な遊ぶ時間を中断し、趣味のテニスのレッスンに出かけていく父親の背中を恨めしく思ったものでした。
けれども成長するにつれ、父親が仕事をしながら自分の時間、趣味、健康を大事にしていること、それが日々を生き生きと過ごすことに繋がっていると分かって来ました。そして、そんな父親を格好いいなと思うようになりました。

親にも一人の人としての人生があり、大切にしているものがある。
それが、人生を豊かに美しくしてくれるということ。
娘にも、どうか伝わりますようにと祈るような気持ちでした。

そんな本番も近づいたある日のことです。
娘から、「図工で、ママへのプレゼント作ったよ」と小箱を渡されました。

何だろうと思いながら開けると、
中には粘土で作ったヴァイオリンと弓、私を模した女の子の人形と一緒に
「いつもありがとう、ヴァイオリン頑張ってね」
とのメッセージカードが入っていました。

寂しいのを我慢して応援してくれた娘に、
ああ、本心では分かっていてくれたのだなあと、感謝と涙が溢れました。
娘からのメッセージが、私に新たな力を与えてくれました。

そして、迎えた本番。
一時は行かない、と言っていた娘も家族と一緒に会場に来てくれました。

この瞬間、この仲間と、そして会場に来てくださった方々と、音楽を共有できる喜び。
もう二度とはやって来ない瞬間。
私は、喜びとありったけの感謝の気持ちを込めて、演奏をしました。
思い出に残る、最高の演奏会になりました。

本番の余韻がようやく消えて日常に戻った今、娘とラブラブしつつも、相変わらず週末は家で楽器を弾いています。
「ママは、時間があればあるだけヴァイオリンを弾いちゃうんだから〜」と、娘には少し、あきれられています。

それでは、長野さんにバトンを渡します。
長野さん、よろしくお願いします。

神奈川県/松下いづみ 





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