ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

「何かしてあげなきゃ」の正体


こんにちは。広島の來山です。
上村さんの息子さんに対するゆるぎない信頼から、息子さんが自分の信じた選択を進めるパワーをもらっているのが伝わってきました。私もそんな信頼関係を子どもと育くんでいきたいと思いました。

去年は息子が高3の年でした。どんな進路を選択するのだろう?と思っていたところ、去年の今頃、息子は就職を希望しました。高校卒業で就職するということは私にとっても初めてのことだったので、狼狽してしまい、いつの間にか、彼の就職をなんとかしてあげなければというエンジンがかかりそうになっていました。

それを実行に移せなかったのは、たまたま7月にハートフルコミュニケーションの講演会を私の地元、広島で開催することが決まっていてその準備に忙しく、彼のために動く時間が取れなかったからでした。また、息子は家で作業をしている私の部屋に来ては、「母さーん、何しよるん?ところで...」と、彼なりの最近のトッピックを面白おかしく話してくれたり、時には「明日ハローワークに直接行くんじゃけど、どう行ったらいいん?」などと質問したり、意見を求めることもありました。それで彼のだいたいの状況を把握できていたのも、私の「なんとかしなくちゃ」エンジンの発動を防いでくれていました。

しかし、彼の希望する求人が見つからなかったり、限られた求人の中から少しでも条件のいいものを選んでも、口コミを見てみると、続けるのが難しそうだったりと、就職活動はなかなか捗りません。息子との会話から、彼が迷走しているように見えました。なので、「夏休みになったら何か彼のサポートをしてやらなきゃ」と私の心がざわつきました。
そこへ、7月の西日本豪雨災害が起こりました。講演会を9月に延期することになって、準備も仕切り直しとなったため、息子に何もしてやれないもどかしさを感じるようになりました。

そんな折、普段は息子にあれこれ言わない主人が、「大学や専門学校と言ったら、座学で講義を聞くばかりで面白くないと思っているかもしれないけど、就職のために必要な能力をつけるもっと実践的な技術を学べる学校もあるよ」と、絶妙なタイミングで声をかけてくれたのです。この言葉は、手に技術がなく就職の難しさを身をもって体験している息子の視野を広げました。
さらにバイトのオーナーが、「専門学校に行くんじゃったら、卒業したら紹介できるような企業があるぞ。CADなんか勉強したら、専門の手当てもつくらしいぞ」と、就職から切り替えるのに足るメリットを助言してくださいました。
彼のために何かしなきゃと気持ちだけがシャカリキになっていた私は、息子には私の他にも彼を見守りながら的確な援護射撃をしてくれるサポーターがいることを教えられました。

そして息子は専門学校の情報を集め始め、とうとう自分にピッタリ合う学科を探し当てました。「今更、進学に変更したら、先生に怒られるよねー」と心配しながら学校に向かう彼。既に9月を過ぎていましたが、学校は快く受け止めてくださいました。条件は、次の試験で卒業が見込める単位をとること。しかも、条件を満たせば学校推薦を検討します、ということでした。

それまで勉強を避けて過ごしていた彼にとって、かなりハードルの高い条件でした。でも彼はこれまでにない集中力で勉強を始めました。時々私のところに「ねー、俺頑張っとると思わん?」とか、「やらんといけんのはわかっとるんじゃけどねー。。。」と、やってくる息子。それまでは途中であきらめてしまうことの多かった彼だったので、どうにか最後までがんばってほしいと、祈るような気持ちでいましたが、息子は最後までやり通し、志望校への合格を手にしました。

私は気ばかり焦っていたけれど、息子はしっかり自分の意見を持ち、自分の意志で行動し、自分の問題は自分で解決できる程、成長していました。
今から振り返ると、私は「息子のために」何かしてあげなきゃと思っていましたが、何とかしたい正体は、他ならぬ私の焦りと心配でした。
その一方で、私もどこかで「彼に任しておいても大丈夫、彼のことだからきっと自分の好きなことを見つけて、自分のやりたいことのために頑張ってくれる」と信じていたことにも思い至りました。その思いに忙しさも手伝って、自分の焦りや不安を解消のために行動せずに済んだのかもしれないと気づきました。

子どもが力を発揮するには、親が自分の心配や不安を解消するために、子どもをなんとかしようとするのではなく、子どもには成長する力が十分にあると信じて、子どものことは子どもに任せて、子どもを見守ることの大切さを実感しました。

あのときの息子が必要だったのは、視野を広げる主人の冷静な一言や、進路変更を後押しするバイトのオーナーの言葉だったんだなーと思うと、ちょっと悔しくもあります。私は何もできなかったと思ったからです。
けれども、息子が私の部屋に来て吐露していたその時々の気持ちを、受けとめることはできていました。それで息子がリフレッシュしたり、安心できていたとしたら、主人とバイトのオーナーと学校の前向きな対応に加えて、私が話を聞くことの相乗効果で、息子の本当に望む進路をサポートできたと言えそうです。

広島県/來山美和子 











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