ハートフルコーチ リレーブログ

日々の発見やつぶやきなど。

日曜ぐーたらパパ


埼玉の上村です。
名和さんと娘さんの葛藤の日々、互いに相手を思いやりながらの決断と覚悟が心に迫り、「さあ、やらな!」と生き生きとした娘さんの姿に私も元気をもらいました。

平成の最後に、夫の話をしたいと思います。
うちの夫は働き者です。朝7時半前には家を出て、夜は9時前に家に帰っていると「今日はずいぶん早かったねー!」と声がかかります。
だから必然的に育児のほとんどは私の担当でした。

それでも私は漠然と、息子たちが中学生になったら夫も子育てに積極的に関わってほしいと思っていました。
理由はふたつ。ひとつは私自身が3姉妹ということもあり、男の子のこと、特に思春期の男子については全く想像がつかなかったこと。単純に、思春期という不安定な時期の男の子の気持ちは同性である夫の方が理解できるだろうと思っていました。
ふたつ目は私自身がそうだったから。私の母は日頃から娘たちの話をよく聞いてくれましたが、高校進学や就職など大きな決断をするときは決まって「お母さんはいいと思うよ。お父さんに自分で話してごらん」と言って私たちに父と話し合うように促し、それが私の中での父への信頼を深めていきました。
そんな家族像が私の中にあったのでしょう。だから息子たちにとって夫が頼れる存在であってほしいと思っていました。

夫はとても穏やかな人です。そしてぐーたらパパでもあります。
子どもが小さい頃は公園でキャッチボールをしたり、キャンプに連れて行ったりしていましたが、大きくなるにつれ休日は家で過ごすことが多くなりました。野球シーズン中はソファでビールを飲みながらテレビの野球中継を観ています。そしてふと見ると、いびきをかきながらお昼寝タイムに突入です。まさに絵に描いたような「日曜ぐーたらパパ」です。
子どもが小さかった頃の私は、「毎日仕事が忙しいのだから仕方がない」そんなふうに夫を理解しようとするものの、私だって毎日の育児や家事、仕事もしている。日曜くらいは休みたい。せめて子どもの面倒だけでもみてほしい!と夫に対してイライラを募らせ、「家族を大切にしてくれない。この人には何も頼れない」と思ってしまうこともありました。

長男が中学生になり、思春期に入っていくのをきっかけに、そろそろ夫にきちんと子育てに関わってもらおうと考えるようなっていた秋のこと。
長男が所属していた部活動で事件が起きました。ある生徒の万引きが発覚して学校から親の呼び出しがあったのです。多くの部員がそのことを知っていて、万引きした品物と知りながら受け取ってしまったこともあったようでした。
学校からの呼び出しは初めてのことです。私は動揺し、夫に電話を入れていました。夫がいつもと変わらぬ態度で話を聞いてくれたことで私は落ち着いて学校へ向かうことができました。

長男は物を受け取るなどの行為はなかったものの、部は活動停止となりました。
学校からの帰り道。長男は沈んだ様子で終始無言でしたが、夫も心配しているだろうと思い、息子に電話するように言いました。私から話すより息子が直接話した方がいいと判断したからです。話したあとの長男の顔に少しだけ笑顔がのぞきました。

その夜、夫は早く帰宅し、夕食が終わると私と次男に2階に上がるように言いました。夫と長男がこんなふうに話をするのは初めてことです。夫は帰宅してからいつもと変わらない態度で接していましたが、長男はやはり緊張していたと思います。私もどんな話をするのだろうかと落ち着かない気持ちでした。

翌日、長男はふだん通りに登校し、私はさっそく夫にどんな話をしたのか聞いてみました。
夫は初めに新品のノートを1冊手渡したそうです。
その1ページ目には「5つのよかったこと」が書いてありました。
「よかったところが5つあったよ。
 1つ目は、自分から電話をかけてきたこと。
 2つ目は、まず「迷惑と心配をかけてごめんなさい」と謝ったこと。
 3つ目は、隠し事をせずにすべて正直に話したこと。
 4つ目は、誰かのせいにしたり、言い訳をしなかったこと。
 5つ目は、電話で話したときにお父さんの話を素直に聞いたこと」
夫は最初に、事が起きてしまった後の息子の行動や気持ちを認めました。帰り道での電話は息子にとっては勇気のいることだったと思います。そのことをまず受け止めてもらったことで、息子の緊張が解けたはずです。
そのあと、ふたりで今回の件についてゆっくりと話しながら息子はページの続きに今の気持ちやこれからのことを綴っていったそうです。
夫は仕事もそっちのけで帰宅し、ノートを用意し、息子の勇気と後悔をしっかり受けとめました。それは長男にとって、父親の愛情に満ちた安心できる時間だったに違いありません。

実をいうと、私は夫の行動にとても驚きました。ふだんの夫からは想像できなかったからです。だから、しっかりとそして愛情ある優しい視線で息子と向き合ってくれたことがとても嬉しかった。
事に対して慌てたり感情的にならずにどっしりと構えていられる頼もしい存在であることにも気づきました。でも考えてみれば学校から連絡を受けたとき、すぐに夫に電話を入れた自分の行動を見れば、私自身が夫が日頃から頼れる存在だということは、とうにわかっていたのですね。

そしてもうひとつ思いがけないことがありました。それは夫から届いたメールです。
「子どもたちのことを任せっぱなしにしてごめんね。でもあけちゃんのおかげでいい子に育ったね。実感」。じわっと涙が滲みました。
夫はちゃんと私を見てくれている、私の日々の子育てをわかってくれている、何よりそれを言葉で伝えてくれたことが嬉しくてこみあげてきた涙でした。

この一連の出来事をきっかけに子育てにおける夫の存在が私の「精神的な支え」となっていきました。
数年後に次男が一時的に学校に行けなくなったときも夫婦でたくさん話し、日
々息子と過ごす私の苦しい思いを受け止め支えてくれました。夫と私の子どもへの関わり方は違います。それが上手くかみ合ってふたりで協力して子育てしてこられたと思います。
息子たちは日々のことは私に、大きな決断や相談事は夫に話します。私の夫への信頼は揺るぎません。私ひとりで子育てを抱え込むこともありません。だから私は「お母さんはいいと思うよ。お父さんに自分で話してごらん」と、母をまねて子どもたちの背中を押します。

息子たちも大学3年、高校2年になり、二人三脚で走ってきた子育てもゴール間近です。
最近、夫とは、これから訪れる夫婦だけの時間をどんな風に過ごしていこうかという話題が増えました。未来の生活も、残りの子育てもふたりで楽しんでいきたいと思っています。
もちろん今でも夫の休日はビール片手に野球観戦です…が、
私たち家族にとっては「愛すべきぐーたらパパ」なのです(笑)。

埼玉県/上村明美 





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