ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

彼の思い


こんにちは。広島の來山です。
子どもたちが色々なことを乗り越え成長していくように、私たち親もまた子育てに苦悩したり失敗したりしながら、親として少しずつ成長しているのですね。そして学ぶことで私たちは成長し続けることができるのだと上村さんのブログを読みながら思いました。

今18歳の息子がギャングエイジの頃のことです。ある日、仕事から帰って玄関に入ると、ピチョン・パチャンという音が聞こえてきました。
「なぜこんなところでこんな音が」と嫌な予感とともにリビング入ると、フローリングの上に直接置いてあるポリバケツ。10匹以上のハゼなどの魚が折り重なり窮屈そうに泳ぎながら、時々跳ねて、バケツの周りはびっちょびちょになっていました。

「なんでリビングにこんなものを置いているの?なんでこんなにたくさんの魚を持って帰ってきたの? こんなバケツで、この魚たちは明日には全滅だ。それを私はどうにかしなければならないの?」
その頃の私はこのような出来事を息子が持ち帰るやっかい事にしかとらえることができませんでした。
その結果、友達と遊んで帰宅し、「俺がとってきたんでー、すごいじゃろうー!」と、どや顔の彼に、とにかくここにあるやっかい事をどうにかすみやかに解決するために、「これどこで取ってきたん? こんなにちっちゃいバケツにこんなにたくさん魚を入れたら、魚が死んでしまうじゃないのー! すぐに取ってきたところに放してやりなさい!」と、私の都合のいい解決法を彼に言い放っていました。

それからも虫取りケースいっぱいの子どもヘビ、カナヘビに、ヤモリ・・・。 どや顔で持って帰る彼に、鬼の形相の私が直ちにリリースさせるということを繰り返しました。そして、どうしてこの子は私が嫌がることばかりするのだろうという怒りと悩みを抱えていました。

その後、彼が小学校の卒業目前の頃から私はハートフルコミュニケーションを学び始めました。そして、人の行動にはよい行いはもちろんのこと、あまりよくなかったり、悪いと思える行動にさえ、その人がその状況で本当に大切にしたかったことが必ずあるという、肯定的意図を学びました。

私にとって「どうして?」が多い息子をよく知るために、私は彼を客観的に観察することにしてみました。
そんなある日、近所のショッピングモールに行く機会がありました。そしてエスニックファッションや雑貨などのお店の前を通った時、「母さん、ここに入ろうやー。おもしろいよ」と、そんなお店をうさん臭く感じて入りたくないと拒否する私を、彼は無理やり引っ張って連れて入りました。
何だか雑然としていると感じられる店の中に、彼はすたすたと入っていきました。中に入ってみると、天然の布で作られた衣類や雑貨、天然石なども置いてありました。「ふーん、こんなところがあるのね」と意外にもうさん臭いイメージとは違う感触を持ちました。

後日、同じショッピングモールに行って、子どもたちが本を選ぶのを待っている間、私は天然石のことを思い出して、そのお店に入って購入しました。すると、本屋から出てきた息子が、「母さん、嫌い嫌いって言っとったくせに、俺が教えてあげた店に行ったでしょう。いい店じゃってわかったんじゃろー」と、とっても嬉しそうに私に言ったのです。

この時、「あー、この子は自分の好きな世界を私と共有しようと思っていたんだ」と初めて気づきました。「自分がワクワクすること、ドキドキすること、楽しいなー、面白いなーと思えることを、私と一緒に楽しみたいんだ」と。しかし、残念ながら私と彼とでは好みにあまりの違いがあって、私がそれをキャッチできていなかったのでした。

そう思うと、あの魚のことや、ヘビやカナヘビ、イモリの時も、何とも誇らしく、嬉しそうにしていた彼の顔を思い出しました。白いオセロに挟まれた黒いコマを引っ繰り返すように、すべてのオセロが白くなった瞬間でした。
「なぜ私の嫌なことばかりをするの?」が、「彼は彼なりの方法で、私に「俺すごいでしょう!」とか、「俺、爬虫類大好きなんよ。かわいいでしょう!」と、大好きなお母さんを喜ばせよう、そして一緒に喜んでほしいと思ってやっていたのだ」と、彼の肯定的意図にたどり着いたのでした。おまけに私がいくら拒んでも懲りることなく、場所を変え、品を変え、彼はいつも自分の楽しいことや面白いことを私と共有しようとアプローチしてくれていたのでした。

それに対して、自分の都合しか考えられず、鬼の形相で否定し、好き嫌いだけで提案や思いを拒絶していた私、何て心の狭いひどい母親なのだろうと申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。そして、彼が私と共有したいことをできるだけ一緒に楽しみ、本当に苦手で無理なことについては、せめて彼の気持ちだけでも嬉しく受け取ろうと努力し始めました。

あれから5年くらい経ちました。私は彼がいなかったら絶対に経験しなかったような、たくさんの体験をすることができましたし、私の凝り固まった固定概念が変わるきっかけを彼が与えてくれました。
最近の息子は私が受け付けられないことを大分理解してくれているようで、厳選して私の限界ぎりぎりのところを狙ってくるようになっています。そして、時にはっとするような、息子ワールドや夢を語ってくれることもあります。また私が受け付けられないことについては、友達と楽しんでいるようです。彼も成長したのですね!

そんな息子のこの夏の目標は、免許を取ったので、『自分の運転する車に家族を乗せて、本場讃岐うどんを食べに行くこと』なのだそうです。ちょっと怖いような、それでいて、彼のことだからきっと家族をわくわくさせるような素敵な旅にしてくれるだろうと家族全員で楽しみにしているところです。

次は五十君さんです。よろしくお願いします。

広島県/來山美和子 







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