ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

信頼できる大人


★★★ 第4回 オンライン・カフェのご案内 ★★★
ブログを読んで感じたことや考えたことを、ざっくばらんに語り合いませんか?
 【日時】 11月7日(土)10〜12時
 【参加費】 無料
 【方法】 オンライン(ZOOMを使用します)
 【お申し込み】 
https://ssl.form-mailer.jp/fms/3f235334672423

ブログタイトルのリニューアルに合わせ、今回よりカフェの名称も
「泣き笑い日記 オンライン・ホッとカフェ」
に変わります。
「ここ、もっと聞きたい」や「ここ。どうして?」を執筆したコーチに聞いたり、そこから思い出したことを話したり。 子育てに奔走する親同士&読者同士として、一緒にワイワイ過ごす2時間です。
代表の菅原裕子も参加します。どうぞ息抜きにいらしてください。
 ▷前回までの様子はこちら

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埼玉の上村です。
想いを受けとめ、想いを伝え、積極的に聞くことで〈心の距離のいい塩梅〉にたどり着いた名和さん。私も息子との〈いい塩梅〉を探してみようと思います。

今でも忘れられない光景があります。
それはスポーツ店のベンチに腰掛け、泣きながらバスケットシューズを履く長男の姿です。
中学1年の秋、部活内で問題が起き3カ月間の部活動停止・奉仕活動期間を終えたとき、半年前に買ったバッシュはもう小さくなっていました。
再出発、部活動再開に向けての最初の準備がバッシュを新調すること。何足か手に取って履き心地を確かめていた息子が何度も肩のあたりで顔を拭っていることに気がつきました。
私は隣に腰掛けて話を聴きました。

息子は部活動再開を喜んではいませんでした。顧問の先生は怒鳴るのは日常茶飯事で手足が出ることも度々あり、奉仕活動中はさらにひどくなっていたようです。そこにはいつも緊張と恐怖がつきまといます。だから本当はそんな場所には戻りたくないと言いました。
それを聞いた私は無理して部活動を続けることはないと話しましたが、息子は、
「1年生は4人しかいないから4人で頑張ろうって決めた。仲間がいるから俺だけ逃げるわけにはいかない」
と言い、また袖で涙を拭いました。
私も学生時代にバスケをしていました。ボロボロになるまで履いたバッシュを新調する時の嬉しさといったらまさに一大イベントでした。だから息子がこんな想いを抱え、泣きながらバッシュを選ばなくてならない様を見て本当に悲しかった。切なかった。13歳の男の子が、恐怖や不安になんとか打ち勝とうと歯を食いしばっている姿。私たちはベンチに並んで座り、しばらくの間ただ泣いていました。

大人が子どもを傷つけるのは簡単です。大人という立場だけで子どもを支配することができるからです。世の中に理不尽なことはたくさんあります。社会に出る前にたくさんの理不尽を経験することも大切だ、などと聞きます。その考えを否定はしませんが、大人の身勝手が引き起こす理不尽など、子どもには何の関係もありません。しかもそれが暴言や暴力であれば言語道断です。子どもはただ傷つき、恐れ、感情を失っていくだけです。

年が明け、息子は部活を続ける選択をしましたが、私は悩んでいました。息子が決めたことを後押ししてあげたい気持ちがある一方、そんな場所に戻すことが果たして正しいのか。そしてもうひとつは、指導とはいいがたい行き過ぎたやり方をこのまま放っておいていいのかという思い。ただ、息子が通っていたのは中高一貫校。親が先生に物申すことでその後の学校生活に影響が出るのではないかと私は恐れていました。そうして部活動が再開した頃、あるお母さんの声かけで1年生の母親4人が集まることになりました。

話してみるとみんな同じ気持ちでいることがわかりました。そこで私たちは親同士が団結し、これからは4人の親が4人の子どもたちをともに支えていく、子どもたちの意思を尊重しながらも、もうこれ以上はダメと判断した時は、たとえ相手が誰であろうと戦いの狼煙を上げよう! そう決めました。子どもたちを守るために力を合わせる仲間がいる。それがどんなに心強かったことか! 私は、まるで勝鬨を上げたような気分でした。
それ以来、私たちは幾度となく集まり、子どもたちの様子や部活動での出来事など互いに情報を共有し合いながら、常に子どもたちから目を離さず見守り続けました。

幾多の試練を乗り越えてきた2年生の秋、突然顧問の先生が変わりました!
K先生が顧問になったとたん、息子にとって部活動は楽しいものになりました。関わる大人が変わっただけで、息子の部活動に対する気持ちが一変したのです。
K先生は子どもたちにわかるようにいつも丁寧に物事を伝えていました。一度でわからなければ何度も繰り返し伝えます。いい加減なことをすれば厳しく注意をしますが、子どもたちはその理由をわかっているので納得して受け入れます。そのうえでどうしたらもっとよくなるかを考えさせ子どもの自主性を促しました。子どもだから…ではなく、対等な立場で子どもと向き合ってくれたのです。
息子はそんなK先生に厚い信頼を寄せ、3年の夏まで全力で部活動に打ち込みました。K先生と過ごした時間は一年足らずでしたが、帰宅後に「疲れたー!」と言って見せる笑顔が充実した毎日を物語っていました。そしてそれが私にとって何より嬉しいことでした。

バスケ部を引退後、高校では陸上部に入り長距離を走っていた息子でしたが、2年生になった頃、彼の成長を感じた出来事がありました。
ある日、廊下でバスケ部の最初の顧問の先生と出くわした時、その先生は「ただ走っているだけで何が楽しいんだ?」と言ったそうです。私はひどく腹を立てましたが、息子は違いました。「まあいいんだよ。あの人は、ああいう人だからさ」と、こともなげに言ったのです。
その先生と同じ土俵に上がることをせず、相手を俯瞰して「そういう人だから」と意に介さない。「ああ、すっかりこの子は大人になったんだな」と思いました。

そしてちょうど同じ頃。息子が中1のあの時、部活動再開前に学校に提出した反省文を偶然見つけました。そこにはまだ幼さが残る文章で苦しい胸の内が綴られ、最後にあのスポーツ店での出来事が書かれていました。
「今のこの苦しいときを乗り越えたら、その経験は絶対、将来自分を支えてくれるものになるからと、お母さんは言ってくれました。だから僕はがんばろうと思います」とありました。それを目にした途端、あの頃の幼さとたった4年でこんなにも大人になった息子の姿が交差しました。よく頑張ったね。そんな想いが溢れ出し私は声を上げて泣きました。

息子が私の言葉を受けとめてくれていたこと。それは息子が私を信頼してくれていた、ということだと思います。信頼できる人の言葉に希望を見出し、勇気をもらい一歩を踏み出す。
私たち大人が子どもにとって「信頼できる大人」になることができれば、子どもは安心して未来に進み、苦難さえも一緒に乗り越えていける。息子にそう教えられた気がしました。

息子は来春、いよいよ社会人として独り立ちの時を迎えます。
なんて頼もしい青年になったことでしょう!(かなり親バカですが(笑))
そしてこれからは彼自身が「信頼できる大人」になっていく番です。
親の役目も一区切り。息子よ、自分の人生だ。思うままに生きていけ!

埼玉県/上村明美 













2020年10月05日(月) No.480 (日記)

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