ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

彼を見守る


★★★ オンライン・ホッとカフェのご案内 ★★★
 【日時】 11月7日(土)10〜12時
 【参加費】 無料
 【方法】 オンライン(ZOOMを使用します)
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ブログを読んで感じた、「ここ、もっと聞きたい」や「ここ。どうして?」を、気楽に話しにいらっしゃいませんか? 代表の菅原裕子や執筆したコーチたちと一緒にワイワイ過ごす2時間です。どうぞ息抜きにいらしてください。
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広島の來山です。
上村さんの教えてくださった、子どもたちが安心して未来に進み、苦難さえも一緒に乗り越えていくのをサポートできる「信頼できる大人」に私もなりたいと思いました。

かつて私は、子どもの悪いところを正して、世の中の基準に合う立派な大人にすることが親の役目と思っていました。だから、彼のできていないことばかりに目を向けました。毎朝「幼稚園に行きたくない」と言う彼を、なんとか正そうとしました。しかし、そうすればそうする程、彼は幼稚園や小学校に苦手意識を持ちました。
どうにかして彼を変えたい。そう思って、8年ほど前、彼が小学校6年生だったときからハートフルコミュニケーションに参加するようになりました。

ところが、ハートフルコミュニケーションが私に教えてくれたことは、親が「子どものため」と自分の思い通りにさせようとするとき、子どもはありのままの自分ではいけないというメッセージを受け取るということでした。それが、生きていくのに最も大切な「自分が好き、このままの自分でいい」という自己肯定感を育む妨げになることも知りました。
私は「彼のため」と思って、こうしなきゃ、ああしなきゃと教えてきたつもりでしたが、それが彼には「こんなあなたじゃだめよ」と伝わることが分かりました。 でも、「えっ、悪いことは悪いと教え、するべきことを教えないと子どもはよくならないんじゃないの?」という思いも拭えずにいました。その一方で、「彼が思うように成長してくれないのは、そういうことなのだろうか?」という思いもあり、私の中で混乱が起きていました。

そんななか、彼は中学生になりました。部活のトラブルをきっかけに、朝起きられなくなり、とうとう学校に行けなくなりました。日に日に生気が失われていく彼の辛そうな様子を見て、私は深く反省しました。彼が自分のことを「この自分でいい」と思えるような子育てをしていたら、こうはならなかったのではないかと。そして、これからは彼のするべきことを采配するのをやめ、彼が自発的に「やりたいと思うこと」を見守ると決意したのでした。

私は、これまでつらい思いをさせていたことを彼に心から詫びました。そのうえで、家でできることを一緒に探すことにしました。 
意外なことに、彼が家で最初に自分から始めたことは料理でした。私が夕飯を作り始めると、隣に立って食材を切ったり、炒めたりし始めたのです。きっと以前の私だったら、「料理なんていいから先にやることをしなさい」なんて言ったことでしょう。
自分のしたいことに集中している彼は、とても楽しそうでした。そんな彼を見ることは、私にとっても嬉しく、心休まることでした。一緒に料理することは、私にとっても楽しいことでした。

私の帰りが遅かったある日、彼がカレーを作ってくれていました。まさかの出来事に、家族でびっくりしながら「すごい! ひとりで作れたんだ。ありがとう」と喜びました。自分で考えて、やろうと決めたことがうまくいった彼も、満足そうでした。
彼は家族のことをよく見て、みんなを思いやることのできる優しい子なのだと気づきました。私が彼にやるべきことを言っていた頃は、反抗されてばかりだったから、彼のこうした側面に気づいていませんでした。

その後、私が「社会とのつながりがあった方がいい」といくつか選択肢をあげると、彼は「新聞配達をする」と言い出しました。とても朝早い仕事なので、本当にできるのか心配でした。でも、彼は自分で決めた仕事に、興味津々、やる気満々でした。家ごとに配達する場所も新聞の入れ方も違うのに、1ヶ月を過ぎるころにはひとりで配れるようになった話を、生き生きと得意げに話してくれました。
彼は、自分がしたいこと、しようと決めたことは穴をあけず責任を持ってやり遂げることができる子だったのです。私がしてほしいことは何でも途中で投げ出してしまう彼が、自分のしたいことであれば、最後までやり遂げることに驚きました。
この新聞配達を機に、働くことにやりがいを感じるようになったようで、高校に通うようになっても、ラーメン店、コンビニ、災害復旧工事の土木作業など、色々なアルバイトをするようになりました。

ただ、家にいる彼はYouTubeを見てばかり。「このまま彼に任せていたら、卒業や進路に支障があるのではないか?」という心配がむくむくと沸き立ち、イライラすることが続きました。それでも、「彼の人生を決めるのは彼なんだ」と自分に言い聞かせました。
すると彼は、人々を楽しませる映像を制作する職業に興味を持つようになりました。音響と映像メディアを学ぶ専門学校に行くと決めた彼は、そこから猛勉強してぎりぎりで高校を卒業。彼は自分が決めたことのためなら、本心は避けて通りたい課題にも挑み、やり抜けることがわかりました。
実のところ、私は、彼がバイトやYouTubeに夢中になって将来のことなど何も考えていないのではないかと疑っていました。しかし、たくさんの経験を積み重ねながら、彼は自分が将来どんなことをしたらいいかを考えていたのです。人は外から見ただけでは、内側で何を考えているかを知ることはできないんだな。自分の勝手な思い込みで相手のことを決めつけることの愚かさを知り、彼を責めなくて本当によかったとホッとしました。

自分がやりたいことを見つけた彼は、水を得た魚のように、学校生活をエンジョイしています。あんなに学校が嫌いだったことが嘘のようです。学校から勧められたバイトで、番組の裏方として音の調整やロケのカメラアシスタントとして経験も積んでいます。
ここまでくれば、もう何も言うことはありません。あとは、彼がやりたいことを実現する仕事を見つけ、就職するのを見守るのみです。

そして、今年は就職の年。親として、楽しみの一方で不安も抱いていたところに、コロナがやってきました。東京への就職を目指していた彼は身動きができなくなりました。
私は、やっと好きなことが見つかったのに、彼はどうなるのだろうと心配していました。でも彼は、経済活動が少し出始めた9月に入って、学校に来た求人にすぐに反応し、あっという間にその会社の内定をもらったのでした。本音を言えば、最後まで自分の目標としていた東京での就職を追い求めてほしい気持ちもありました。それは本人も同じ気持ちなのかもしれません。でも、彼は広島での仕事を選びました。だから、今は彼が自分で選んだ仕事に打ち込んで、本当にやりたい夢を叶えることを見守っていこうと思います。

私は彼の子育てを通して、子育てとは親の思う通りの子どもにすることではなく、子どものしたいことを認め、成長を見守り、できるまで待つことだと知りました。そうすれば、子どもの中に備えられたその子だけの花を、子ども自らの力で咲かせることができるのだと学びました。辛い思いをさせてしまいましたが、自分で考えて決め、自らの道を生き生きと歩けるように成長してくれた息子、私に大切なことを気付かせてくれた彼に感謝します。

次週の五十君さん、よろしくお願いします。

広島県/來山美和子 



2020年10月12日(月) No.482 (日記)

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