ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

子どもの「好き」を見守る


東京のやまだ です。
本藤さんの1年近くの闘病生活、そしてご長男の葛藤や決断、それぞれの想いに読んでいて胸が熱くなりました。今後ともお身体を大事に過ごしていただきたいと思います。

さて、我が家の長男(小6)は今、サッカーに夢中です。ポジションはGK(ゴールキーパー)。逆にGKになりたくてサッカーを始めたという少々変わり種でもあります。
学校の休み時間に何度かGKを任され、スーパーセーブを決めた(本人曰くですが・・)そんな些細なことがきっかけとなり、自分はGKに向いていると思い込み始めました。そして「将来は、日本を代表するGKになる!」と熱く夢を語るようにもなりました。
なぜそんなにも一途になれるのか、その性格がホントに羨ましくさえ感じます。しかし、これまでを思い返してみると「好きこそ物の上手なれ」を自でいくタイプ、小さい頃から自分の「好き」にはこだわりを持っていました。保育園の頃は、レゴ、LaQ、オセロ、UNOなどの遊びをはじめ、小学生になると対戦型のカードゲーム、ベイブレードなどにもはまり、お小遣いの全てをつぎ込んだ時期もありました。魚釣りに夢中になった時は毎週のようにハゼ釣りやアジ釣りにも付き合いました。習い事の水泳も平泳ぎが好きだからと続け、自粛生活中のオンラインゲームは放っておくと6〜7時間はやり続けていました。それこそ無駄?無意味?と感じる物や時間も多かったようにも思います。
それでも私には「自分の好きを大事にして欲しい」そんな想いがありました。なぜなら私自身が子どもの頃、自分の好きを優先できずに親の顔色、機嫌ばかりを伺ってきたからです。今となってはそれが大きな心残りなのです。だからこそ、子どもには「自分の好き」を心ゆくまで楽しみ没頭して欲しいとも思っていました。

そんな長男はある時期から「GKだけの練習がしたい」と、あるクラブチームが主催する単発のGKスクールに通い始めました。しかしそれもコロナ禍で中止が続き「いつになったら再開するんだろう・・」「どこかチームに入って練習したいな・・」とも言い始めていた9月後半、そのクラブチームの監督からジュニアユース(中学生クラス)のセレクション(選抜試験)を受けてみないかとのお誘いを頂きました。
私もそのセレクションのことは気になっていたので、お誘いを頂いて嬉しかった反面、戸惑いもありました。何しろ長男は今までサッカーの本格的な練習、試合の経験もないのです。あるのはサッカーが「好き」「GKが上手くなりたい」という気持ちだけだったからです。

本人も最初は、「中学生になったら部活で頑張ろうかな・・」と言っていたので、私もそれで充分と思っていました。でも「好きこそ・・上手なれ」の気持ちは大切にしたいと思い、「実は・・」とセレクションの誘いを受けたことを伝えました。本人も戸惑いの方が大きかったようですが、GKスクールのコーチが専属で教えてくれることも伝えると「それだったら、挑戦してみようかな。」と練習会に参加してみることにしたのです。
迎えた練習会初日、何から何までレベルが違うクラブチームの練習に勝手がわからない長男は右往左往するばかり・・しかもGKなのに飛んでくるボールのスピードが怖くて尻込みする始末です。それでも必死についていこうとしている姿を見て、私の方が涙が出そうにもなりました。練習会後には、「やっぱりレベルが違うね・・」と言葉少なに項垂れる長男。「あんなボールが飛んでくるとは思わなかったよ・・」「知らないことがありすぎ・・」とポツリポツリと力なく発する長男の言葉を「うんうん」と黙って聞きました。そして最後に「それで、どうしたいと思ったの?」と尋ねました。すると「それでもGKとしてもっと上手くなりたい。できればクラブチームでサッカーを頑張りたい・・」と言うのです。
今までは自由さ、気ままさを好んできた長男が、たとえ厳しいことを言われても、プライドを傷付けられても、それを受け入れる覚悟を決めていることに正直驚きました。きっと「自分の好き」にこだわり積み重ねた経験の中で、自分の力を信じること、どこまで頑張れるかを試したい気持ちもあったのかもしれません。だったらと私も覚悟を決めて応援することにしました。

その後1ヶ月、長男は歯を食いしばって練習会に参加し続けました。そしていよいよセレクションが近くなってきたある日、監督に呼ばれ言われたのです。
「練習会で君の頑張りを1ヶ月見させてもらった。君が本格的なサッカーの経験なく、この練習会に参加すること自体、相当の勇気と覚悟が必要だったと思う。それでも君は毎回来て意気込みを見せてくれた。そんな君と今後もサッカーを一緒にやっていきたいので入団内定を出したいと思います」
長男は「頑張ってはくれたけど、入団は厳しい・・」と言われることも覚悟していただけに、それはまさに耳を疑う言葉でした。そして一言、「ありがとうございます。よろしくお願いします」と頭を下げました。
監督曰く、GKに必要なのは技術や経験以上に自分を信じる強い思いだそうです。特に練習や試合の時も孤独感を味わいやすいGKというポジションだけにそのメンタルが一番重要になるそうです。長男が自分で育ててきた「好き」へのこだわりが強みとして認めてもらえたことが、私にとっても嬉しく感じました。そしてその日の練習帰り、内定通知書の入った封筒を大事そうに抱えながら「頑張ってきて良かったよ」「これからも頑張るよ」と嬉しそうに微笑む長男の顔が何とも誇らしかったです。

私は子どもが、自分の好きにこだわり夢中になったり、頑張ることができるのはとても幸せなことだと思っています。もちろん、時には「偏りのある人間になったら・・」という不安や、「本人が辛い思いをしたら・・」と親心がはたらくこともありました。それでも今回のことを通して、そんな不安や親心も少しずつ手放して、子どもを信じて見守ることの大切さを感じました。気づけば長男は、私が思っている以上に色々なことを考え、自分で自分の望む結果を手に入れられるようになっていたのです。そしてこの先もより広い視野を持って自分の「好き」にこだわり続けて欲しい・・です。
サッカーとの出会い、チームとの出会いが今後、長男にどんな変化や成長をもたらしてくれるのか、4月からの中学校生活も楽しみになってきました。
では、今回はこの辺で名和さんにタスキをつなぎます。

東京都/やまだゆか 





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