ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

娘が決めたこと


続けて初投稿の田中です。
これからどうぞよろしくお願いいたします。

小林さんのお話、少しドキドキしながら読みました。
娘さんは、おもいもよらない状況に戸惑われたことでしょう。
ともに辿られた時間に胸が熱くなりました。
目標を持ってさらに進み出した娘さんと、それに寄り添う小林さんに、心からエールを送りたいです。

私は以前知的障がい者の通所施設で働いていました。
そこでは、多くの学習の機会を得ました。中でも、「ピープル・ファースト」を知れたことは、私にとって大きな学びでした。
「ピープル・ファースト」は、知的障がいをもつ人たちが、自分たちで自分たちのために発言する、自己権利擁護組織です。文字通り、第一に人間。障がい者であるまえに人間です、という意味です。
「自分のことは自分で決める」を合い言葉に、日本でもピープル・ファースト全国大会が開催されています。
1泊2日の日程で行われるのですが、全体会や交流会、多種多様な分科会に至るまで、知的障がいのある当事者が会議を重ねて決定し、運営しています。
私はそこで、生き生きと自分たちの思いを発信し、自信に満ちあふれた障がい当事者達の姿を目の当たりにしました。
そして親や支援しているはずの職員が、いかに当事者本人の選ぶ機会や決定する機会を奪っていたのかということに気づかされたのです。

通所施設に通う人はみな成人していました。けれど、親からの申し送りでは「お弁当を作れなかったので、昼にはおにぎりを買わせてほしい」「寒くなったらこれを着させてほしい」というようなことがありました。
なかには、食べるものが決まっていることで安心して過ごせる人や、体温調節が難しい人もいます。そういう人たちには当然必要な支援です。
だけど、親の心配をよそに、お昼ご飯を買いに行くとカップラーメンを選ぶし、寒くなったらストーブの前に立ちます。それぞれ十分に本人が心地の良い選択をしているのです。
言葉だけでのコミュニケーションでは通じにくい場合もあり、意思疎通の難しさを感じることもありましたが、彼ら彼女らは確実に自分で選び、決定していました。

あれから20年がたち、私は現在3人のこどもの母親になりました。真ん中の娘には知的障がいがあります。
今小学校6年生ですが、毎日一緒に登校し、下校時は学校へ迎えに行きます。娘が1人で登校したいと言う日もあります。たった7分ほどの通学路ですが、なにかあったら一人で対応できないのではないかと心配でこっそりついていってしまいます。
今になって、当時「おにぎりを買わせてほしい」「寒くなったらこれを着させてほしい」と言っていた親御さんの、子どもを守りたい気持ち、親である私が守ってやらなければならないと思う気持ちを十分なほど理解できます。
登校前の朝の準備ひとつをとっても、他の兄弟二人には任して見守るということができることでも、娘には、朝起こすことから始まり、ついつい手出し口出しばかりしてしまいます。
娘が一人で朝早く起きる時もあります。そんなときは、自分で山盛りご飯に鮭フレークをかけて、好きな動画を観ながら食べていたりします。その姿を見て、私は気づかされます。当然娘にも、生きていくためのチカラはあるのです。

昨年末、小6の娘は進路を決める必要がありました。地域の公立中学校へ通うか、バスに乗って隣の市の支援学校に通うかです。私は常々、本人に決めてもらいたいと思っていました。そのために、早い時期からできるだけ娘にわかりやすいかたちで情報提供をするように努めました。それでも娘の意見が変わる度に、どこまで理解できているのだろうか?と疑ってしまう自分がいました。
それぞれの学校の体験や見学に行った時、娘は立ち止まって動かなくなってしまうことが度々ありました。案内係の先生が困るので、その度になんとか動くよう促していました。わざわざ困らせるようなことをする娘にほとほと疲れましたが、そうやって学校の様子を観察していたのだと思います。

いよいよ締め切りの日。娘は「バスで行く」と決めました。
私はここにきてもなお、自分に誘導がなかったか、娘はどこまで分かって決めたのだろうかと不安に思いました。だけど、もし娘が地域の中学校を選んだとしても、同じ不安に襲われるだろうと思ったのです。
誰にもわからない先の事に不安を抱いてるのは、娘ではなくこの私でした。
そう気づいたとき、娘の決めた進路を心から応援しようと思えたのです。

私は、障がいは個性と言い切ってしまうには、少し違和感があります。やはり明らかに壁になっていると感じる場合もあるからです。それでも、第一に人間として、一番身近にいる親が、娘本人が選ぶ機会や決定する機会、もっといえば、失敗して学ぶ機会を奪ってはいないだろうかと自問します。
こどもそれぞれが、いきいきと自分の人生を歩んでいけるように、親ができることはなにか。まだまだ学ぶ必要がありそうです。

今回はこの辺で同じく新メンバーの羽木さんにたすきをつなぎたいと思います。

大阪府/田中千世子  





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