ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

私の選択肢


群馬県の山本です。
羽木さんのお話、耳が痛くなりました。私は親と「対話」はもちろん、会話もあまりしてないな…と反省しつつ、まだもう少し先になりそうです。その時まで「対話」のことを心にとめて温めておきたいと思います。

さて、私は昔のことを思い出していました。
長男が小さい頃、子育てのやり方に迷いながらも、正しい答えは一つしかないと思っていた頃のことです。私は厳しい母親でした。

ずっと後悔していることがあります。ハートフルに出会う前のことです。
今から13年前、息子が小学校に入学した頃のことです。息子は身体も大きいほうでしたし、しっかりものでしたから、あまり心配もしていませんでした。
それが入学して2週間ほどたった頃、急に「今日は休む…」と言いました。おなかが痛いとも言ったかもしれません。
でも、明らかに仮病だと確信した私は瞬間的に、学校へ行かせることを考えました。行ってさえしまえば、大丈夫と思っていました。それに、仮病で休ませることは、その時の私の選択肢にはありませんでした。
ランドセルを何となく確認していると、友達のノートを発見しました。
間違って入っていたようです。私はすぐにそのノートを届けるという名目で、学校へ行くことに決めました。そして、説得を始めました。息子は元気がありませんでしたが、それは今だけだとほとんど気にしていなかったと思います。
ランドセルを背負わせて歩き出した(出させた)息子でしたが、何度も何度も足が止まりました。小学校までは600mほどで近いのですが、かなりの時間がかかりました。
途中で私は「あぁ、無意味だな」と実感しました。でも、それでも、帰ろうとは言いませんでした。無意味だと思いながら、引き返すことは私の中では「正しく」なく、最後までやり通すことが良いことと無意識に思っていました。
学校まで何とかたどり着かせ、ノートを先生に渡しましたが、息子は先生に会っても何も変わりませんでした。私が想像していた反応はみじんもなく、私の「正しい」と思った手段も言葉も行動も全てが的外れのように感じられました。
私は後悔の気持ちでいっぱいで、帰り道のことは記憶にありません。

息子は家に帰ってからしばらくは寝ていたと思います。その姿を見て、心が疲れていたことがじわじわと伝わってきました。仮病ではなかったのです。
後からわかったことですが、真面目な息子は先生の話を一言も漏らさず聞こうとしていました。それで疲れ果ててしまったようでした。
でも、その一日だけ休むと次の日からまた何事もなかったかのように登校しました。
息子は本当に休みたくて「休みたい」と言ったのだとわかってきました。息子を疑うことから始めて、自分の正しさを押し付けたことを後悔しました。息子は、休んだことで心と体を回復させたようでした。私がマイナスとしか思っていなかった休むことが、プラスになることもあると初めて知りました。
無意味だと心底感じられたことは、私にとって貴重な経験でもありました。私の思う「正しい」は正しくないかもしれないと気付き始め、その後もどうしたら良かったのか考えることになりました。そして、ハートフルコミュニケーションに出会いました。学んでいくうちに少しずつですが私の中に選択肢が増えていきました。失敗を繰り返しながらも子どもたちの気持ちを聞こうとし、その答えを信じて応援するようになってきました。

そして10年の月日が経ち、息子が高校1年生の夏休みのことです。
「今日、おれ部活休むわ」とその日は突然やってきました。
正直、学校を休むと言われるよりも驚いた記憶があります。野球部で練習がきついことはわかっていましたが、学校へは勉強よりも部活をやりに行っているような感じでしたから、
よほどの理由があると感じました。でも、その驚きを隠しつつ、「部活、休むのぉ〜」と少しぎこちなかったと思いますが、何とか返しました。
無理やり行かせようとは思いませんでした。息子の気持ちをとにかく受け止めようと思っていました。自分の気持ちよりも先に息子の様子がいつもと違うことに目が行き、息子の気持ちを知ろうとしていました。息子は高校生でしたし、聞いてもほとんど語りません。でも、いつでも話を聞くという姿勢は伝わっていたと思いますし、根掘り葉掘り聞かれないことも息子はわかっていたと思います。私は、彼自身が考えて決めたことを信じて受け入れられるようになっていました。

あの時の失敗のおかげで、私は聞く耳を持ち、変わることを選べました。失敗もマイナスではなかった!あの時の的外れな自分の行動と向き合うことは辛かったけど、親も失敗して当たり前だと振り返っていくうちに思いました。
あの時、失敗したと落ち込んでいる自分に声をかけるなら、「失敗は取り返しがつかない事ではないよ。その失敗から学んで子どもと一緒に成長できるよ」と伝えたいです。
選択肢が一つではないとわかっただけで、世界が広がったように感じます。これからも失敗することはあると思いますが、失敗してもそれを受け入れ、成長の糧にしてたくましく進みたいと思います。

では、秋岡さんへ、タスキをお渡ししたいと思います。

群馬県/山本美徳 




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