ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

聞きつ、聴かれつ


大阪の田中です。

小林さんは、大変な責任感と努力をもって日々お仕事に向き合われているのだと感じました。そして、自分の思考パターンはどんなだろうかと考えるきっかけをいただきました。

今回は、我が家の長男がくれた気づきについて書きたいと思います。
我が家の長男は現在中学三年生。
思春期真っ只中ながらも、学校や友達、趣味の話しをよくしてくれます。たまに、イライラしてるなー、と感じることもありますが、声を荒げるようなことはなく、割と平和に過ごしていると思います。
それでも、学校から帰って部屋にこもって出てこなかったり、私の小言にだんまりを決めこむこともあります。
そんな長男とたわいもない話しをしていた時のこと。息子は友達の間で聞き役にまわることが多いらしく、「傾聴」について話しが及びました。

わたしには後悔していることがあります。
数年前、学生時代の大切な友人から人間関係のことで悩みを打ち明けられた時のことです。
当時私はコーチングを習い始めたばかりでした。私はコーチングで、おおよそ答えが見つかりそうに無いことでも、自分の中に答えがあるんだ!と、目の覚めるような体験をしました。この感覚を味わってほしい、そして前向きになってほしいという思いで、「それでどうしたいと思ってる?」などと聞き返していたのです。それに友人は返答してくれていました。

しばらく経って、あの時の悩みはどうなったか尋ねると、「ひとりで解決できるから」と言われてしまいました。なんだか急に距離ができてしまったような気がして、胸の奥がジンジンと痛みました。なぜこんなことになってしまったのか思いを巡らせてみたとき、悩みを打ち明けてくれたときの友人の顔を思い出しました。私が聞き返して彼女が返答をしているときの、なんとも言えない困ったような表情です。
あのとき、なぜ気づかなかったんだろう・・・。コーチングのスキルもないのに得意げになっていた自分を心底恥じ、彼女はその時、安易に答えを見つける事を求めてはいなかったのではないか。まずは、ただただ耳を傾けて聴いてほしかったのではなかろうかと思い至りました。
私がコーチングで自分の中に答えを見つける体験をしたときも、まずは傾聴があってのことでした。ただただ聴いて受容してもらう。そうすることで、自分自身の深いところにふれることができ、答えを見つけるきっかけや気づきが訪れたのです。

そんな経験もあって、私は、「聞き役になるって、すごいことやん!」と、スイッチが入ってしまいました。そして、目の前にいるひとの言葉をただ「聴く」ということの難しさをとうとうと喋り出し、その場の話を全部私がさらってしまいました。
その間、まさに息子はうんうんと聞き役をしてくれていました。はっとして、「あー、聞いてくれてありがとう。我が家で一番傾聴ができてるのは、君やなぁ」と言うと、「うちで一番話し聞いてくれるんは、猫やで」という返事が返ってきたのです。
衝撃を受け、思わず、「ねこ?」と聞き返しました。うんうんとうなずく息子。これはふざけてるのか、一家言あるのかどうなんだろう、と頭の中がぐるぐると動き出したとき、ふと昔読んだ本のことを思い出しました。
名家に産まれた男の子が、親から大きな期待をかけられながらも応えられず、その思いを飼い犬に聞いてもらっていた。飼い犬は、全身全霊、一言も口を挟まずただ受け止めてくれる存在。その時間があったことで、彼は彼自身でいられた、というような話しです。

一見平和に過ごしている息子も、当然ながら葛藤や怒りや悩みや迷いがあるでしょう。
そんなことも、気軽に話してくれていると安心している自分がいました。そして、そんな息子に対して、傾聴どころか励ましのつもりで、根拠もなく「大丈夫!」と言葉をかけていたのです。
息子にとって、母親からの「大丈夫!」が力になったこともあったかもしれません。けれど、いつかの友人のように、ただただ聴いてほしい、そんなときもあったのだと思います。息子はたまに、私がやっとひとりになれた、と思っているところへ話しに来ることがあります。なんとタイミングの悪い、と思っていたのですが、それは彼が話しを聴いてほしいというサインなのかもしれません。
なんでも話してくれる、怒りを爆発させるようなことはない、と安心できていたのは、彼が彼自身のやり方で気持ちに折り合いをつけ、噴出させることなくいる努力をしてくれているからだと気づかされました。
「私の息子」という関係に甘えることなく、きちんと、ひとりのひととして向き合う。そういう気持ちで、全身全霊、彼の言葉に耳を傾けたいと思います。

それでは、この辺で羽木さんにタスキをお渡しします。

大阪府/田中千世子 









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