ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

ゆっくりさんの子育ては


兵庫の羽木です。
すべての経験に意味があると言いますが、全力で頑張ったことも辞めたことも、すべてが今やりたいことにつながっているというお話を読んで、田中さんの今やりたくて頑張っていることがうまくいくよう、心から応援したい気持ちになりました。

今回はゆっくりな気質の息子との付き合い方について書いてみたいと思います。
息子の子育ての中で悩ましいものの一つに「ゆっくり」がありました。何をするのも遅くてマイペース。遅いというより、急ぐ気がないといった方が近いのかもしれません。
幼稚園へ行く朝時間がない時など、一つ上の娘には「急いで食べて用意しなくては!」が伝わっていて大急ぎで準備してくれるのですが、息子は状況を読まなくて、ゆったりといつまでも食べていてテレビに見入っていたりします。家族で出かける時も、せっかちパパは早くから玄関の外に出て待ち(苦笑)、全然用意のできてない息子を急かしながら娘と手伝うのが常でした。

これは思春期になっても変わらず、毎朝、電車に間に合いそうもないのに急ぎもせず、間際になって時間割をしていたり、提出物が間に合わないせいで部活練習停止もしょっちゅうでした。
睡眠時間が足りていないのだから早く寝ればいいのに、まずはソファでゆっくりし、あれしてこれしてと自分のルーティーンをこなさないと寝ない。見ていると、この子には、段取りとか、効率という概念はないのだろうかとイライラしたり、ヤキモキして、うるさく手出し口出しするのにも拍車がかかりました。そして、当然ですね、思春期には思い切り反抗されました。

そんな反抗期に悩んでいた頃、ハートフルコミュニケーションに出会いました。エニアグラムという気質学を学び、息子と自分の気質を知りました。
この子の気質は自分のペースを乱されるのが嫌だし、ルーティーンも必要なのかも。ゆっくり気質はこの先も変わることはない。そうか、私はこの子を、全く違う気質に必死で変えようとしていたんだ。変わることがないのなら、この子はこういう気質の人なんだと受け入れて、この気質のままに、社会に出て幸せに生きていけるように育てることを考えればいいんだとわかると、少し楽になりました。

私は心配性な気質で「こうあるべき」という思いも強いタイプ。「学校には遅れずに行くべき」の自分の「べき」に何の疑いも持っていませんでしたが、養成講座で学ぶうちに、そこも変わりました。
講座では子どもが自分でやってみるなかで、失敗して何度でも自分で考えてやりなおしてみる、この経験のなかで子どもに生きる力がついていく。だから、子どものことは子どもに任せるのが凄く大切だということを学びました。
私がうるさく言えばその日は遅れずに行けるかもしれない。でも、この先一生言い続けることはできない。今、間に合うことがそこまで重要ではないということは考えてみると意外と多い。目標は少し未来に置いて、社会に出るまでに、遅れないように行くためにはどうすればいいのか、自分で考え失敗しながら体得していくことの方が大切。だから、遅れて気まずい思いをする経験をさせればいいのです。
私は息子に張り付いてヤキモキするのを辞めました。「なんで用意しておかないの!」とか「ほら、もう時間ないよ!」と定期や財布を並べてイライラして叫んだりしなくてもよくなりました。凄く楽になりました。

うるさく言わずに見守っていると、悪くなっていた親子関係もよくなっていき、信頼関係が戻ってきたら養成講座で学んだコーチングも試せるようになりました。将来に向けての計画などないに違いないと嘆き案じていましたが、コーチングをしてみたら、自分なりに進路について考えていることもわかりました。
その息子の考え通りにできるよう、私は私の不安から口出ししないよう、息子の塾や学校での勉強の計画や段取りを一切頭に入れず完全に息子に任せたら、息子が自分で自分を律して驚くほど計画通りに頑張りました。息子は、ゆっくりでも本当に必要な時は動くんだと、信頼できる経験となり、もう息子に任せても大丈夫なんだなと思えるようになりました。

そんななかで、少しずつ自分が見えてきました。
子どもが小さい頃は、出かけるのが遅くなる、せっかちパパが待っている、など「急がないと」の半分は親の都合だったこと。私は子どもが目標をもって自分の幸せのために一生懸命努力している姿を見たかったのだということ。しかも、効率よく意欲的にテキパキと。だから、そうしない息子にイライラしていた。
気質的には、せっかちパパのように何でも早めにテキパキやるタイプはゆっくり気質にイライラするというけれど、私はそこまでテキパキできるタイプではない。息子のスケジュールへの段取りが頭に浮かんで「今始めないと間に合わない」と不安になって言わずにいられなくなるように思いました。
結局私は、自分の不安を解消したかったり、自分の思うように動かない息子にイライラしていたのかもしれません。

息子は大学生になってからも、ゆっくりや、段取りが悪いことでいろいろ失敗はしていました。1限目の単位は間に合わなくて結構落としていたり、レポートも期限直前に2日続けて徹夜していたりなど。それでも失敗しながら、いろいろ自分で考え、工夫して、学生生活も楽しみ、留年しないで卒業し、就職できました。
社会人になってからも、一人暮らしのなか、たまに見せる、上司の電話に速攻出てる姿や計画立てて転職活動していた姿に、成長するんだなあと嬉しく思いました。

「何でも遅くて空気読まない、社会に出てからやっていけるのだろうか」と案じていた息子でしたが、息子の気質を理解して、あとは私がうるさく言って邪魔しないようにしていれば、失敗しながら学んでいって、社会で頑張っていけるようになるんだなと、ゆっくりな息子の子育てを振り返って思います。
「今、それが早くできなくても大丈夫だよ」と、20年前の私に言ってやりたいです。

では、このへんで、山本さんにタスキを渡したいと思います。

兵庫県/羽木絵里  





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