「ママなんて、だいっきらい」の行く先
千葉の小林です。
チャウさんが海外での子育てに奮闘され、お子さんをとおしてご自分の気持ちにも向き合われたこと、私も勇気をもらいました。遠く離れた場所からの投稿、嬉しかったです。
チャウさんからの初タスキを受け取りました。
今日は、4月から高校3年生になった娘のことを書こうと思います。
娘は先月、3度目の宝塚受験に挑みました。結果は一次試験で不合格でした。バレエやジャズダンス、歌などの実技をみてもらうのは二次試験。一次はたった15秒の面接だけです。
毎日重ねたレッスンを見せることなく、あっけなく15秒で1年間が終わりました。一次試験は容姿や素質の試験なので、食べ盛りの女子高生ですが、友だちとスイーツを食べることも我慢、白米も我慢・・太らないように・・そんな毎日を送ってきました。
インターネットで合格発表。きっとあるはず!と思いながら受験番号を探しますが、娘の番号がない・・
見間違いかと思って、もう一度見ても、ない。何度見てもない。
受け入れなければいけない現実というものがあります。悲しかったけれど、その日、今まで我慢していた食べたいものを食べさせたい! そう思って、唐揚げや天ぷらうどんやお菓子を用意しました。いつもより心を込めて作りました。
娘は泣きはらした目で美味しそうに食べてくれましたが、小さくなった胃はそれを受け付けず、夜中に吐き気を催してしまいました。
こんなに頑張ったのに・・子どもの苦しみを目の前にしたとき、私はやり切れなくなり、「もうこんな思いはさせたくない! 来年は宝塚なんか受けなくていい!!」という気持ちと、「来年、諦めずに見返してやれ〜!!」という気持ちが錯綜しました。思わず口に出してしまいそうになったとき、娘が小さかったころに通った、スイミングスクールでの出来事を思い出したのです。
「もうスイミング辞めたい」と突然言い出した娘に、続けさせることばかりを考えて、なにかを言いたい娘の気持ちも考えずにお説教をしてしまったことがあります。
「なんで辞めたいの?」と理由を聞いてみたのですが、「だってつまらない」とか「だって近所の友達と遊びたい」など、「だって」のオンパレード。私はそれが言い訳にしか聞こえなくて、「ダメなものはダメ」「そんな理由で、途中で投げ出さないで」と、それ以上話をしませんでした。
その日の晩、娘は自分の枕に「ママなんてだいっきらい」と油性マジックで書きなぐり、泣き寝入りしてしまいました。辞めたい理由とかよりも、その行為にショックを受けました。そんなことをするほど嫌なら辞めさせようと思い、ろくに話し合いもせずに退会届を出しました。本当は私も娘も続けたい意思はあったのに、違った結果になってしまったのです。
あのとき、どんな気持ちだったの?としばらく経ってから聞いてみたことがあったのですが、「ママは全然話を聴いてくれない、本当はスクールバスに酔うのが嫌だったんだ、泳ぐのは好きだったのに・・」と教えてくれました。あのとき、もっと話を聴けばよかったと猛反省です。
あのときの私の正直な気持ちは、仕事をしている私にとって、娘が放課後にスイミングスクールに行ってもらえると、所在が明らかなので安心していたところもありましたし、一度始めた習い事を簡単に辞めさせてはいけないのではないかと意地になっていました。娘の辞めたい理由よりも、私の勝手な思いが先行していました。最初から話を聴こうとしていなかったのです。
それに、「なんで?」と理由を聞かれたほうは、「だって」と言いたくなるもので、そこに本当の気持ちとは違うことを口走ってしまうこともあるのかもしれません。だから話は平行線。負のループになってしまいます。私に本当の気持ちを汲んでもらえなかった、娘の悲しそうな目は忘れられません。
そんな10年近く前の出来事をふと思い出し、そのときの私を後悔してもしきれない、だから今度こそは・・。娘が結論を出すまで待とう、話をしてくれた時には、「なんで?」と言わずに最後まで話を聴き切ろう、そう決めました。
親は子どもよりも人生経験があるので、こうしたほうがいいのではないか、こっちのほうがいいのではないかと、安全なレールを敷きたくなるものかもしれません。将来を左右するような岐路に立った今、どうにかしてあげなければと思う気持ちもあります。でも、あえてそうしない選択をしました。
娘がなにを選んで生きていくのかは、娘の問題です。悲しむ娘を前に、できることなら変わってあげたいと思う瞬間もありましたが、娘の問題は娘が乗り越えたときに解決されるのだと思います。娘はまだ失望の底にいて、乗り越えるには時間が必要かもしれません。でも、きっとあなたなら大丈夫、自分で一歩を踏み出すことができる、と信じて待つことにしました。
いつでも話を聴くよ、と窓を全開にして、いつでも娘の声が聞こえるようにしておこうと思っています。いつか話をしてくれる、そう思っています。ラストの宝塚受験に挑むのか、大学受験に切り替えるのか、ほかの選択をするのか、娘が自分で決めたことを話してくれ、そこに至るまでの気持ちの揺れもありのまま語ってくれるといいなと思います。
それには、ただただ頷いて、寄り添って、最後まで話を聴ききっていこうと決めています。私にはその準備ができました。もう大丈夫、そう思っています。
それではこのへんで、田中さんにタスキをお繋ぎします。
千葉県/小林由美子
★★★ 第10回 オンライン・ホッとカフェのご案内 ★★★
ある日の日記を題材に、菅原裕子や執筆コーチと語り合うこのカフェ。
春の日程が決まりました。
【日時】2022年5月7日(土)10〜12時
【参加費】無料
【方法】オンライン(ZOOMを使用します)
【お申し込み】
https://ssl.form-mailer.jp/fms/0760cb20739594
今回のテーマは「思春期以降の親の役割」。
取り上げる日記は山本美徳さんの 「愛することの正体、発見?!」です。
大学進学で親元を離れ一人暮らしを始めた長男。「不安」と「心配」で揺れ動く親心。「愛すること」の変化に気づき、心配な気持ちが徐々に「信じて見守る」へと変わっていった体験を綴っています。
この日記を読んだ後の「もうちょっと聴きたい」、「もっと知りたい」を叶えにいらっしゃいませんか?
子どもの成長の過程の中でも、今までと違う悩みが出てくる「思春期以降の親の役割」について、ざっくばらんに語り合い、お互いの経験や知恵を分かち合いませんか?
※ 前回までの様子はこちらでお読みいただけます。
2022年04月11日(月)
No.559
(日記)