ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

9歳の決断


神奈川の秋岡です。
山本さんの「子どもの誕生日が近づいてくると思い出す」情景の記載、とても共感しました。私もそういう記憶がいくつもあり、二人の子どもの誕生日が近づいてくるとあれやこれや蘇り、自分の思い出に浸ってしまいます。

さて、我が家では、この4月から小学4年生になった下の娘が2月から、塾に通い始めました。
娘は小さな頃から自分の意思を強く主張し、決まったルールを守るより自分の気持ちを優先させたいタイプ。小学校2年生の時点でも「勉強は好きだけど、宿題は嫌い。これをやれって決まってるから」と言っていたくらい。さらに娘は提出物も苦手で、忘れものもしょっちゅうあります。
我が家の地域は高校進学に関して中学校での内申点の割合が非常に高いと聞いていましたので、こんなタイプの娘が公立中学校にいくと内申点という枠組みに縛られて息苦しくなってしまうのではないか、それよりも生徒一人一人の個性を伸び伸びと解放させてくれる環境がある私立中学校の方がよいだろうな、と以前から思っていました。

そこでまずは3年生の10月頃、率直に「ママとしては伸び伸びと中学生活を過ごしてほしいと思っているので、中学入試をしてあなたらしさをそのまま受け止めてくれるような私立の中学校に通う方がよいと思っている」と娘に伝えました。そこに、先に私立中学に通っている息子も、この娘の中学生活の過ごし方を案じたのか加勢します。妹に「公立中学校にいくと、肩に髪がつくと絶対結ばないといけないんだよ(そこか!)」など、妹が気にしそうな点から私立中学にいくと彼女が喜びそうな点を伝えてくれました。
でも娘には、中学によって学習環境が異なる、そのために塾に行って準備をして受験をするということがピンときていません。また、どんな習い事も「誰が一緒に行くか」が非常に重要な要素である娘。結果、「友達が一緒にいかないと塾には行かないからね!」とほぼ拒絶されて終わりました。
たしかに、私立中学受験は約3年間の塾通いや試験へのプレッシャーなど、かなりの労力を要するので自分なりのモチベーションがないと続かないでしょう。彼女なりの意志を受け止めて、ここでやりとりを終えました。

さて、そうは思ったものの、4年生カリキュラムのスタート時期が近づいてくることもあってそわそわしてきた私は、11月の終わりに、仲の良いお友達とそのお母さんと4人でとある塾へ個人面談に行くことにしました。
面談が楽しかったのか、終わった後、娘は少し通いたそうにうずうずしている様子が見え、「●君、行こうよ」とまでも言っていました。しかし、一緒に行った友達はお母さんが中学受験に対してまだ決めかねていたため、通うかどうかその時点で保留という結論に。それを聞いた時点で、娘のうずうずは、いったん「●君が行かないなら、私も行かない」に切り替わりました。私としてはもちろんがっかり。

そして翌12月、「2月から授業が始まるから1月中頃までに決めないと、手続きがあるんだよね〜」とそれとなく決断を迫る言葉を数回かけた私。同時期に塾に行くことを決める仲良しの友達も出てきて、自分ごととして感じる機会が増えてきた様子の娘。「●ちゃんは●塾の入塾テストを受けるんだって」と自分から伝えてきてくれたり、時には「塾には行かないけど、中学受験はする」といって、息子に「それは実質難しいんだよ。」と諭されたりもしていました。

そんなやりとりから自分なりに一生懸命自分の身の振り方を考えようとしていることが娘から十分に感じ取れた私は、1月になると、娘の反応が自分から何かしら出てくるまでは何も言わずに待とうと腹を決めました。
親としての気持ちを率直に伝え、可能な選択肢をしっかり示し、それでも選択しないというのであれば、もうここからは子どもの問題です。意志の強い娘なら、どのタイミングでどの決断をしても、その後自分の決めた道で進む強さがあるだろう。それはつまり、中学受験を今決めなかったとしても、また結果的に受験しないと決めたとしても、彼女なりに「こうする」という答えをその時々自分でだして、その中で「自分はこう思う」を大事にして彼女なりの生き方を作っていけるのだろう、そう考えていました。
心の底にある娘の強さに対する信頼感のようなものを私は思い出したのです。

そうして年を越した1月の上旬の平日、夕飯を食べている最中に、娘が突如「決めた。塾に行く。友達がいなくても一人でも行く」と宣言したのです。私は、「そうなの、決めたの。」と努めて穏やかに言いました。すると娘は「だって、髪も結ばないといけないし、制服もかわいくないから、○○中学には行きたくないんだもん!」と理由を続けました。

「そこかい!」と正直心の中で叫びましたが、親からすれば「その理由?!」というものでも、彼女からすれば自分なりの理由をもって出した答え。しかも、こちらから聞いてもいないタイミングで自分から発した言葉なのです。
実は塾に通い始めることで、これまでに通っていた他の習い事にも調整を入れる必要があり、それは彼女にとって「塾に行きたくない」方向に傾くことは承知の上で、事実として伝えていました。よって、それらも踏まえていろいろな想像力を働かせ、言葉にした以外の理由についてもきっと思いを巡らせ、恐らく塾に行くことと引き換えに我慢しなければいけないことも考えたうえで、自ら行きついた結論です。尊重しない理由がありません。私は、「よし、行こう。手続きを進めるね」と嬉しい気持ちを込めて答えました。
それは、子どもを信じて待てば、その子なりの道を自分で考えて選ぶということを、身をもって体験した嬉しさでした。娘を信じて、自分を信じて良かった。そう思えました。娘の9歳の決断がこの後どんな道を辿っていくのか、側で見守っていきたいと思います。きっとこれからもたくさんの決断を彼女はしていくのでしょう。それも何だか楽しみになりました。

では、この辺りでタスキを安村さんにお渡しします。

神奈川県/秋岡美奈子 





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