ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

まず、受け止める


千葉の小林です。
チャウさんがお嬢さんと一緒になって楽しんだことで、お嬢さんの水への恐怖心も和らいでいったんですね。「こうしなければ」という思いを捨てて、一緒に楽しむことを私も実践していきたいなと思いました。

今日は、助産師の仕事をしていて、最近気付いたことを書いてみたいと思います。
赤ちゃんを産むのは、男性には耐えがたい痛みといいます。陣痛中に腰を擦りながら、産婦さんの訴えに耳を傾けます。
「痛いよ〜」「もうやだ〜」「無理〜」「助けて〜」いろんな訴えを産婦さんが発してくれます。
そんな時、私は極力励ましていました。「赤ちゃんも頑張っていますよ!」「あと〇時間くらいで産まれるよ!」など、どうにか頑張って欲しいという思いです。
でも、それで頑張れる人もいますが、陣痛に苦しみながら顔を横に振る人もいます。
「そんなこと言われても無理・・」きっとそんな気持ちだったのかもしれません。

「赤ちゃんなんて産みたくない〜!!」など、妊娠や出産に否定的な言葉を聞くと、思わず「そんなこと言わないで」と言いそうになりますし、頑張ってほしい思いで「大丈夫だよ!」と励ましていたのですが、そう伝えてもなかなか前向きになれずにいる産婦さんもいて、産婦さんと助産師の二人三脚で頑張りたい!という私の思いだけが空回りしてしまうこともありました。
どうしたら関係性を深められるかな・・そう思ったときに、『子どもの心のコーチング』の本の中に書いてあった、「ピアノやめたい」と子どもが言った時の親の接し方を思い出したのです。ピアノと出産は場面が違いますが、相手がネガティブな言葉を発したときにどうしたらいいのかは同じだと思いました。
私は、産婦さんの言葉をまずは全部受け止めてみようと思ったのです。

「そうだよね、産みたくないくらい辛いよね」「痛いよね〜」「やだよね〜」と、「そうなんだね」という気持ちを込めて、受け止めることにしました。

すると、それまで叫んでいた産婦さんが、私の言葉に耳を傾けてくれます。また、もうすぐ産まれてくる赤ちゃんのことや、待っていてくれているパパへの気持ちなども話してくれたりします。陣痛室から笑い声が聞こえてきたよ、とスタッフに驚かれることもあります。楽しい出産の時間となるのです。
出産が怖い気持ちも、痛いのが嫌なのも、この人はわかってくれる、そう思ってもらうことで産婦さんの信頼を得られるのかもしれないと思います。

そんな仕事での経験をして、そっか、そんなコミュニケーションの取り方を子育てでも仕事でも誰にでも使ってみればいいんだと思いました。

例えば、「勉強やだ〜」「試験なんてなんであるの〜」「やりたくないよ〜」と試験勉強に向き合えない娘にも、「やだよね〜」「なんであるんだろう〜」「やりたくないよね〜」と、私が高校生に戻った気持ちで伝えてみると、「そうなのよ」と言いながら机に向かいます。「試験なんだからしょうがないじゃない」とか、「ぶつぶつ言ってないで早くやりなさい」なんて言おうものなら、反撃されて、喧嘩になったりします。
また、実家の母がご近所付き合いのストレスをぶつけてきたときも、今までなら面倒だなぁと思いながら「そんなの放っておけばいいよ」なんて、アドバイスをしているつもりで言っていたのですが、「それは困ったね」「大変だよね」と母の気持ちをまず受け止めると、解決にはならなくても話しができたことですっきりするのか、前向きな気持ちになってくれたりします。

もしかしたら、人が弱音を吐いたりネガティブなことを発するときは、事態をどうにかしてほしいのではなく、ただ聴いてほしい、わかって欲しいだけということもあるのかもしれないです。
もちろん、出産時の痛みはどうにかしてほしいですから、なるべく痛みを軽くできるように、腰を擦ったり励ますことも必要です。でもその前にまず受け止めること、そこがスタートで、受け止めてからさてどうしようかとスムーズに出産が進んでいくように、助産師の腕の見せどころなのかなと思います。

助産師歴27年でやっとこんなことに気付くなんて遅すぎるのかもしれませんが、お産を通して人とのコミュニケーションの真髄がわかったような気がしています。
私の期待や思いが強ければ強いほど、それと乖離した言葉は受け止めにくかったり、否定したくなったりしますが、まずは受け止めてみること、ここからやってみようと思っています。
それではこのへんで、田中さんにタスキをお繋ぎします。

千葉県/小林由美子 






No. PASS