「ありがとう」という言葉のパワー
★★ 第12回オンライン・ホッとカフェのご案内 ★★
【日時】2022年11月13日(日)10〜12時
【参加費】無料
【方法】オンライン(ZOOMを使用します)
【お申し込み】https://ssl.form-mailer.jp/fms/450f83a1756721
季節ごとの恒例、日記を読んで語りたくなったことを語り合うオンライン・ホッとカフェ。
秋カフェで取り上げる日記は、先週掲載の「生きがいへの分岐点」です。
”生きがい”はどこにあるのか? どうやって見つけるのか?
興味を覚えた方、どうぞお気軽にご参加ください。
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芸術の秋に渡海さんの奏でるピアノの音色に耳をすませたいと思う、埼玉の落合です。
「何かをしてもらったら、必ず感謝を伝える」。子どもの時から教えられてきたことです。
当たり前なのだけれど当たり前ではない、「ありがとう」という言葉の力を感じたことを書きたいと思います。
先日、私が助産師として勤める病院で知り合ったママさんが出産しました。
そのママさんとは、外来で見かけると気さくに話しかけたり、話しかけられたりする間柄です。彼女は大きなおなかをさすりながら、「生まれてくることを楽しみにしているよ。今回はコロナだからな〜。家族の立ち合いができなくてちょっと寂しいな。今日は会えて嬉しかったよ〜。ありがとうね、また会おうね」と毎回、私の目を見て話してくれます。出産を心待ちにしている彼女の言葉に、私も自然と同じ気持ちになっていきました。
それから1か月ほど過ぎた頃、赤ちゃんが産まれました。早速会いに病室へ入ると、小さな我が子を抱いた出産直後の彼女の表情は柔らかく、窓からの眩しいくらいの光が彼らを照らして、言葉はなくても温かさが伝わってきました。第一声、「生まれたよ。赤ちゃん。会いに来てくれたんだ、忙しいのにありがとう。本当にありがとうね。家族が増えるっていいね」。その言葉から、家族を思う、溢れんばかりの感情が伝わってきました。
私は驚きました。ずっと彼女の気持ちを共有させてもらっていただけなのに、こんなに感謝してもらって…。でも、素直な言葉をかけてもらえて、とても嬉しい気持ちになりました。
それまで仕事では、「自分の思ったこと、感じたことを何でも素直に表現するべきではない」と勝手な思い込みを持ち、素直に表現することを避けていました。なぜなら、妊婦さんは10ヶ月間お腹の子どものことを思い、産むことに真剣に向き合い、生まれる直前には「命がけの姿」を私の前で晒されます。助産師である私は、彼女たちの元々もっている「産む力」を引き出せるように、寄り添ったり、伴走したり、必要なときに医療者としての助言を含めた選択肢を提案ができる存在でいたいと考えていました。ですから日頃から、年齢、国籍、信仰など分け隔てなく、出産に臨む女性を常に全力でサポートできるよう、ニュートラルな心の状態であることに努めていました。
でも今回、彼女の裏表のない「ありがとう」という言葉をもらい、ニュートラルであることにこだわるあまり、感謝を伝えていなかったことに気づきました。
職場で決められたローテーションでの当番制とは言え、産婦さんを担当させていただいたご縁、その方の身体に触れさせていただき、また、赤ちゃんを人生の一番初めに抱っこさせていただいくこと、命がけで出産に臨んでくださったことを誰よりも身近で経験させてもらえる有難さを、素直に伝えていきたいと強く思わせてくれました。
あらためて、「ありがとう」という言葉はとてもパワフルだと感じました。その気持ちを持って向き合い、立ち合わせていただく出産の一回、一回を、これまで以上に大切に感謝の言葉を伝えていきたいと思います。
それでは、いつも私の後にブログを書いてくれている、カナダのチャウさんに感謝の気持ちと次のバトンを渡します。
埼玉県/落合恵子
2022年10月24日(月)
No.591
(日記)