ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

友達との経験で大人になっていく


神奈川の秋岡です。
山本さんが書かれた様子から、子ども達が活き活きと自分を表現している情景が浮かんできて、こちらも何だか幸せな気分になってきました。

さて私は今回、「この瞬間を逃さなくてよかった」と思った先月の出来事について書いてみたいと思います。

中学校2年生の息子はダブルダッチ部(2本の縄跳びで音楽に合わせて跳びながら演技をするスポーツ)に所属しており、年明けの演技披露の場に向けて、他の同級生チームメンバー5人と演技を作ったり、音楽を編集したり、プランを練っています。そのなかでひとつ決めなければならなかったのが、発表当日の衣装。息子たちは1ヶ月程前から、みんなで集合して買い物に行こうという話になっていました。

先月の初め、学校が平日2日間連続でお休みだったので、そこを狙ってメンバーみんなで集合することに。息子の学校は私立校なので、同級生も住んでいるところは学校を中心として西や東にバラバラで、なかなか簡単には集まる気にこれまでならなかったようですが、この機会にとショッピングセンターが隣接する駅に朝10時に集合となりました。この時点で、「学外で友達が一同に集まる」ということに息子がとてもワクワクしていることを感じましたし、当事者でもない私もワクワクしていました。

当日、息子以外の同級生たちは時間よりもかなり前に集合場所についていたようです。休みなのに、早くから家を出た子もいるんだろうなと想像すると、息子たちの胸の高まりが聞こえてくるようです。その後、それぞれ衣装代予算をもった中学2年生男子たちは、衣装を探す旅へ。身長も全然違う6人がああでもない、こうでもないといいながら服を体に合わせたり来たりする姿が目に浮かびます。
買い物が終わったら、みんなでラーメンを食べに行く予定とも聞いていました。コロナ禍ということもあり、学外で友達とだけで外食するのが、実は息子は初めてでした。みんなでカウンターに並んでいるのかなとまた想像します。

さらに買い物のあと、どこかで自主練習をすることになるだろうと事前に聞いていました。
息子は以前から、我が家のマンションの周りが練習に最適だと言っていたので、みんなを連れてきてくれたらいいのにな、と淡い期待を抱いていました。そして、ちょうどその日は娘の塾の面談があったため、在宅勤務の後午後をお休みにしていました。
「どこで練習するか、決まったら教えてね。」とLINEを打っていましたが、13時前の仕事を終わろうとしたその瞬間、息子からLINEが入ります。
「うちのメインエントランスの前」
このめったにない機会を逃すまいと、急いでPCを片付け、お昼ごはんを5分で食べ、現場へ駆けつけました。動機はただ、息子達がみんなで集まる姿が見たい、それだけです。

エントランス横の広場に行くと、6人が縄を回したり跳んだりしています。以前も学校で6人が練習しているのを見たことは何度もあったのですが、なぜかこの日は特別キラキラして見えます。「みんなよく来てくれたね…!」と思わず言葉が漏れました。
そして汗ばむような陽気だったその日、私はみんなに「アイス食べたい人!」と声をかけます。すると、多感な中学2年生の男子の2人くらいは「いや・・・大丈夫です」と答えたのですが、一人可愛がられキャラの同級生が無邪気に「いただきます!」と大きな声で言ってくれました。そこでみんなも「じゃあ食べようかな」という空気に変わったのを見て、よし来た、私の役目だと、ウキウキしながら目の前のコンビニに私は走りました。
こうして、この6人の経験の中の一部を味わえたことが、私はとても嬉しかった。

その日の夕方から夜にかけて、同級生メンバーのお母さんたちとのやり取りで聞くと、ワクワクからの充実感に満ちていたのは我が家の息子だけではなかったようです。
ある子は普段あまりお母さんと話さないのに、その日はあった出来事を沢山話したり、また普段なら絶対応じてくれないのに、軽く頼んでみたら買った服を着てくれたりしたそうです。多感な時期で母親とは距離をとりたくなる男子も、いつもより気分が高揚して母親に心を開けられるような、そんな経験を他の同級生メンバーもしたようでした。

多感な時期に友だちとの時間や経験を共有することがいかに大事なことかを、かつてその時期を通った私は経験から知っています。
部活動の試合で負けた時にペアを組んでいた友だちと一緒に泣いたこと、試験が終わった日にみんなで隣町の駅まで行ってドーナツを食べて何時間も過ごしたこと、電車に1時間近く乗って自分たちだけでコンサートに行ったこと、その時々に味わった感情の一つ一つが今の私を作っています。そして、一緒にいろいろな経験をし、お互いが影響を受けながら、親から離れた「自分」という人格を持つ大人へと変わっていく姿を間近で見ていた友だちは特別です。
中学・高校の同級生とは今でも連絡を取り、タイミングが合えば一緒に時間を過ごしますが、あっという間に会っていなかった間の距離はなくなります。言わなくても「わかっている」、「通じている」、そんな感覚を持てるからこそ会うとホッとできる友だちが、現在の私でさえ作ってくれているのかもしれません。

そんな友だちとの経験を息子が味わっている、その瞬間を近くで感じることができて、そして立ち会えたことが私にはとてつもない喜びでした。その喜びはまるで自分の人生が二つあるような、そんな気にさえしてくれたのです。
午前中取り組んでいた仕事が完全に終わっていない中で午後お休みをとることに、実は少し後ろめたさも感じていたのですが、「こんな瞬間を目の当たりすること以上に、私の人生に大事なことがあるだろうか」と、心から思えました。「本当に今日は良い一日だった」と、午後から夜にかけて何度もつぶやきました。この日の出来事は、私にとって子どもたちの学芸会くらいの特別イベント感がありました。

またこんな瞬間が訪れるといいな、そう思いながら、この辺りで、安村さんにバトンをお渡しします。

神奈川県/秋岡美奈子






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