ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

親子で紡ぐ、ある習慣


★★★第20回「泣き笑い日記 オンライン・ホッとカフェ」★★★

季節ごとの恒例「オンライン・ホッとカフェ」。20回目の今回、語り合う題材は、本日の日記執筆者、㓛刀知子さんが書いた
「余計な口出しをしないために」です。テーマは「余計な口出しの心理に迫る!」。

【日時】2024年11月17日(日)10〜12時
【参加費】無料
【方法】オンライン(ZOOMを使用します)
【お申し込み】https://ssl.form-mailer.jp/fms/96601934835740

今は口出ししないほうがいい、手出ししないほうがいい。
そうわかっているのにしてしまうこと、ありませんか。
なぜ、そうしてしまうのでしょう? 何がそうさせているのでしょう?

㓛刀さんに尋ね、参加者同士で感じ・考え・思い出したことをおしゃべりしながら、あなたに合った「余計な口出しの代わりにできること」を見つけていきます。
どうぞご参加ください。

※ 前回までの様子はこちらでお読みいただけます。

★★★

前回の菅原さんの日記を読んで、高齢の親に変化を求めるより、自分が腹を括って視点を変えて付き合うことが幸せな親子関係を築くコツだと思いました。

こんにちわ、東京の㓛刀です。
今日は私が子育てに悩むなかで採り入れてきた、息子とのある習慣について綴ってみます。

私と息子は就寝する前の静かな時間に、ジュースを入れたワイングラスで「乾杯」することがよくあります。嬉しいことがあった時、緊張がほぐれてホッとした時、テンションを上げたい時……。そのタイミングはさまざまです。ジュースを飲みながら、短い時なら30分位、長い時だと3〜4時間、ベッドに行くことも忘れて語ります。日常的な情報のやり取りではなく、ひとつの話題から思考を巡らせていく感じです。学校や勉強のこと、友達のこと、異性のこと、将来のこと、好きな音楽のことなど、話題は小さいことから大きなことまで色々で、今では私の子育てになくてはならないコミュニケーション法となっています。<>

この“乾杯”タイムを始めたのは、息子が小学5年の3学期、不定期登校(完全なる不登校ではなかったので)になって2年経った頃でした。
息子が最初に学校に行かなくなった時、私たち親子の信頼関係は壊れかかっていました。正確に言うならば、その何ヶ月も前から息子は私に対する信頼を失っていたのに、そのことに気が付きませんでした。
その頃の私は母を亡くし、増えた家事と仕事の両立にてんてこ舞い、大好きなおばあちゃんを失い寂しさに打ちひしがれる息子の孤独感に寄り添うどころか、その気持ちに気づくことさえありませんでした。それもそのはず、その時だけではなくそれまでも、ずっと私は母に子育てを任せきりで、息子の「観察」を怠っていたのですから。
後から“乾杯”タイムで息子に聞いた話によると、私の気を引こうと何度かサインを送ったのに私がそれをキャッチせず、我慢の限界を超えてついに不登校を決行したと。そして気づけば彼はゲームにハマり昼夜逆転も起こしていました。私への反発心あっての不登校だったかもしれませんが、体力的にも朝起きて登校するのは限界だったと思います。

息子がそんなひどい状態になって初めて、自分が信用されていないことに気づきました。困惑した私は息子の信頼を挽回すべく必死になりました。観察する、話を聞く、対話する、些細なことも褒める、何かを任せてみる、息子の好物を作る、元気に挨拶する、笑顔で話す、電子機器を禁止している間、何時間でもボードゲームに付き合う、一緒に散歩に出る、仕事の時間を大幅に減らす、会食は控える、出張には行かない、などなど。
どれほど効果的だったか定かではありません。でもとにかく全力で息子に向き合いました。息子の不定期登校は相変わらずでしたが、こちらの本気が伝わったのか、私との信頼関係は回復されていき、閉じかけていた彼の心も開いてきました。

“乾杯”タイムを始めたのは、そんなふうに信頼関係が回復してきた時期のことです。ヒントは、『海のアトリエ』という絵本でした。
学校が苦手な女の子が親戚の絵描きさんのアトリエで1週間過ごすという物語で、私が「これだ!」と思ったのは、絵描きさんと女の子がランプの灯る部屋でスイカの香りのする水」で乾杯する場面でした。大人っぽいことを体験して楽しそうにする女の子と似た体験を、私も息子にさせたくなったのです。そして私自身も、絵本の真似事をしてワクワクしたくなりました。そこで私は「スイカの香りの水」の代わりに葡萄ジュースをワインに見立て、息子との乾杯を試してみることにしたのです。

ある夜、私は息子をもてなす気持ちで、赤く光るワイングラスを用意しまし
た。“乾杯”タイムは、ただ乾杯することではありません。私はこの時、息子の心が伸び伸びするよう難しい話は持ち出さないことを意識しました。息子が好きなように話ができ、私が興味を持ってそれに耳を向け、息子のために惜しみなく時間を費やす。そうやって私の愛情を伝えることが目的です。

「乾杯しない?」と声をかけると、息子はテーブルの上をちらっと見て、「うん、いいよ」と言い、ワイングラスの赤い光に目を輝かせました。
テーブルを挟んで向き合い「乾杯!」と言ってグラスを響かせると、息子のワクワク感が伝わってきます。そしてグラスの縁に口をつけて美味しそうに葡萄ジュースを飲み始めます。魔法のワイングラスは非日常の世界を私たち親子に与えてくれ、心がほぐれてすっかりいい気分になりました。
息子も私もこのなごやかな“乾杯“タイムが気に入り、何かにつけ葡萄ジュースを酌み交わし、対話を重ねるようになりました。もう3年ほど続いていますが、これまでに何回乾杯したことでしょう。

息子に愛情表現するために始めた “乾杯”タイムは、気がつけば息子にとっても愛情表現の場になっていました。そして私と息子は愛情のキャッチボールをしながら共同作業で信頼関係を深めてきました。
そんな今だからこそ、苦しかった過去を前向きに振りかえり、あの時の心境を思い起こし、「どうして学校に行きたくなかったのか」「何を辛いと感じたのか」「何に腹が立ったのか」「何をして欲しかったのか」など冷静に語り合えます。
新たな共同作業として、自分たちが歩いてきた道のりを振り返り、確かめ合うことで、ネガティブだった経験がプラスの経験に転換され、次のステップを踏む際の安心感にもつながります。

現在、高校生活を満喫する息子ですが、かつての自分と今の自分と比較して私に伝えることで、自分の成長を実感し、それが自信にも繋がっているみたいです。
さらに最近では「聞く力」も備わってきて、それを試したいのか、グラス片手に私のお困り事を聞いてくれたりもします。そんな時、息子の成長を頼もしく思います。
そんな息子はまだ17歳。この先、苦悩する場面はきっとあるはずです。親子で育んだ乾杯”タイムという対話法が、この先の人生で活かされ続けたら嬉しいです。
では、このあたりで和木さんにバトンをお渡しします。

東京都/㓛刀知子 









2024年10月28日(月) No.697 (日記)

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