巣立った後、どうする?
こんにちは、東京の㓛刀です。
2年間参加させていただいた「泣き笑い日記」も、今回が最後となりました。
前回の日記では、息子の大学受験の結果が冷や汗ものだと書きましたが、その後、おかげさまで本人が希望していた大学から合格の知らせをいただきました。
そこからはジェットコースターのような勢いで入学式を迎え、あっという間に新学期へ突入しました。息子が希望通りの大学に通えることになり、私自身、心から安堵しましたし、本当に嬉しく思いました。けれど、不思議なことに、そうした前向きな感情とは別に、胸の奥がずっと落ち着かず、妙なざわめきが渦巻いていました。
「せっかく希望が叶ったのに、どうして私はこんなに落ち着かないんだろう」
そんなふうに自分に問いかける日が続きました。
受験の緊張が長く続いていた反動なのか。それとも慌ただしく入学式を迎えたせいで気持ちの切り替えが追いつかないのか。それぞれ一因だろうけれど、どうもそれだけではない気がする……。
そんなふうに思っていると、ある日、「もしや、これが自分の本当の気持ちでは?」と思いつきました。
息子は毎日、大学から帰ってくると、新しくできた友人のことや、電車の中で見かけた人のこと、サークルの新歓での出来事などを楽しそうに話してくれます。
高校時代は、決められたカリキュラムや限られた行動範囲のなかで起きる出来事が話題の中心でした。けれど大学に入った途端、彼自身の主体性が会話の端々に感じられます。下宿している友達からの刺激も大きいようで、「俺もすこし家のことやらなくちゃ。役割分担決めようよ」などと言って率先して家事を手伝ってくれたり、ついこないだまで高校生で世話が焼けたのに急に大人びて私の前へ前へ走っていくような気がしました。
そうやって自分の意思で広い世界へ踏み出していく姿に頼もしさを感じる一方で、私の中には「いよいよ巣立っていくんだな」という寂しさもじわじわと広がっていました。あの得体の知れない動揺の正体は、これだったのかもしれません。そう考えると妙に腑に落ちます。
息子のお弁当作りも必要なくなり、授業の開始時間も日によって違うので朝起きてくるのか心配する必要もなくなりました。制服で学校へ通っていた頃とは違い好きな服を着て出かける耳元には、ピアスまで光っています。
私の生活にも時間的には余裕ができたはずなのに、息子の内面と外見、両方の変化が少しずつ積み重なっていく日々に、余裕どころかストレスに近い動揺が生じていたとは……この意外な発見にも驚きでした。
さらには、パタパタと羽を広げて飛び立とうとする姿を目の前にした途端、「この子が巣立ったら、私、何していけばいいんだろう」という不安すら感じたのです。
以前、ハートフルコーチの米澤佐知子さんのセッションで、「親の自立」について話し合ったことがありました。その時、他の参加者の方々は専業主婦とのことで、「自立するためにも仕事をしたい」と話されていました。
私はシングルマザーとして、子どもが生まれてからずっと働き続け、家計を支えてきました。でも、自分が“親として自立している”とは、思ったことなどありません。親の自立と自活することとは訳が違うようです。
では、本当の親の自立って何なのでしょうか。
私の生活をはたから見れば、仕事に追われながら子育てもして、充実した毎日を送っていると捉えられるかもしれません。実際これまで、「子どものため」「生活のため」必死で働いてきました。
でも、自分自身の魂が本当に喜ぶこととして仕事をしてきたかと問われたら、残念ながら決してそうではありません。仕事を通じて人生を豊かにしてくれる大切な財産を得たことには感謝しています。しかし私が理想とすることは、利害に関係なく打ち込めること。仕事ではどこかで常に自分を押し殺していますが、そうではなく、もっと純粋に全身全霊で打ち込めること。そういう対象があれば、子供が巣立った後も私は充実した人生を過ごすことができるのではないだろうか。
息子を育てる日々は、喜びも苦しみも悲しみも含め、私の人生そのものだったし、今もそうです。これほど濃密な体験に匹敵するものはそう簡単に見つかるはずはありません。
それでも、これから自分が生きていく時間のなかで力を注げるものを見つけ、自分自身を成長させながら、結果、誰かの役に立てることができたなら、それは理想の人生です。この世を去るときに、「悔いなし」と言えると思います。
今回、子どもの成長する姿を前に、「寂しい」と感じた素直な気持ち。そこから目をそらさずに、「じゃあ、その先どうする?」という問いをじっくり考えてみたい。今、心の中にぼんやり浮かんでいる「やってみたいこと」の輪郭はまだ曖昧ですが、少しずつ形にしていけたらと思っています。
ではこの辺で、和木さんにバトンを渡します。
東京都/㓛刀知子
2026年05月18日(月)
No.781
(日記)


