ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

歩いて見つけたもの


★★★第27回「泣き笑い日記 オンライン・ホッとカフェ」のご案内★★★

【日 時】 2026年8月1日(土) 午後1時〜3時
【参加料】 無料
【方 法】 オンライン(Zoomを使用します)
【お申込み】 
https://ssl.form-mailer.jp/fms/41ba37e4885360

季節ごとに日記の筆者と読者が集まり、お互いの思いや経験を分かち合うこのオンライン・カフェ。今回とりあげる日記は「巣立った後、どうする?」です。

「この子が巣立ったら、私、何をしていけばいいんだろう?」

ふとそう思ったことはありませんか。
この機会にその思いと向き合い、筆者の㓛刀さんや読者のみなさんとおしゃべりしてみませんか。

どうぞお気軽にご参加ください。

★★★

大阪の吉野幸女です。

この前々回の、台風が来る前日のこと。 月曜日の夜、高校3年生の娘は大学に通っている先輩とご飯に行き、大学の話をたくさん聞けたようだった。 大学はとても楽しい場所らしいと胸を躍らせていて、少しウキウキしすぎていたのかな、 自転車のバッテリーを充電器にしっかり差し込んでいなかったようだった。

翌朝は雨。 もともと出発が遅れていたのに、10分ほどして娘が戻ってきた。「自転車が動かない!」という。「歩いて行くわ」と言うが、歩ける距離ではない。かなりの距離がある。 雨も降っていたので「きっと間に合わないだろうから、電車で行ったらいいやん。」と伝えると、交通費の心配をしていたので、少し多めに渡した。 帰りは塾もあって遅くなるから迎えに来てほしいと言われ、台風も気になったので快諾。 無事に出発した。

娘はこれまで体調不良以外で遅刻などしたことがない、根が真面目な子だ。そんな娘が「歩いて行く」と言い出していたのは、私の中でも少し特別に映った。今思えば小さなサインだったのかもしれない。

夜、塾まで娘を迎えに行くと、上機嫌で帰ってきた。 車の中で話が弾む中、娘が「今日は歩いて行った」と言う。「お金渡したよね。なんで?」と聞くと、「塾から今日までに用意しておいてと言われた参考書を買ってなかったから、そのお金が必要だった」とのこと。「どれくらい遅刻したの?」と聞くと、午前の途中に着いたらしい。8時に家を出て、雨の中ずっと歩いていたことになる。

「せっかくお金を渡したのに、なんで……」

一瞬、頭の中に疑問や呆れが湧き上がった。雨の中を何時間も歩くなんて、風邪をひいたらどうするのか。親としての正論や心配が、言葉になって口から出そうになる。

けれどその時、少し前、学年主任の先生が 「最近、今まで遅刻したことのない生徒が遅刻することが増えている。ずっと頑張ってきてストレスが限界に来ているのだろう。」 と話されていた言葉が、急にフラッシュバックした。あの時は『みんな大変なんだな』とどこか他人事のように聞いていた言葉が、目の前の娘の姿に、パズルのピースがハマるようにぴたっと重なったのだ。

その言葉を聞いたとき胸がざわっとしたことも思い出した。そしてこの日の出来事で、その言葉が“意味を持って”戻ってきた。 ああ、こういうことかもしれない。 娘も限界に近いのかもしれない。

重たい荷物を抱えて、誰にも頼らず、ただひたすら雨の中を歩いていた娘の姿が胸に浮かんだ。「なんでそんなことを…しんどかっただろうに。どうして言ってくれなかったんだろう。」そう思った瞬間、胸がぎゅっとした。
寒くなかったかな。途中で足が止まらなかったかな。何を考えながら歩いていたんだろう。ひとりで抱えて、ひとりで進んで。でも、歩きながら何かを整理していたのかもしれない。この子はこうやって、自分を保とうとするんだな。そう思ったら、責める気持ちはすっと消えた。 この子なりの理由があったんだろうな、と静かに思えた。

「この子は今、ただ気持ちを受け取ってほしい状態なんだ」

そう直感した。何よりも、目の前で楽しそうに今日あったことを話す娘の、その晴れやかな表情を壊したくなかった。だから私は、湧き上がった「なんで?」をそっと脇に置いて、ただ娘の話に寄り添うことに決めた。

すると娘は「歩いて行って良かったわ〜。いろんな発見があったし、おいしそうなお店もいっぱいあった。またそのお店一緒に行こ」と嬉しそうに話し、表情も晴れやかだった。

歩いて見つけたお店の話を、本当に嬉しそうにきらきらした笑顔で話してくれる。その表情を見た瞬間、「あぁ、この子は今日、雨の中を歩きながら、自分の心を自分で整えたんだな」とストンと胸に落ちた。

​娘が自分で自分を整えようとした姿が、愛おしく、そして誇らしくて嬉しかった。そんな娘の心の変化に、親としてただ寄り添えたこと、あのとき問い詰めずに笑顔を受け止められたことに、私自身も救われたような気持ちになった。

たまにはこんな日があってもいい。

雨の中を歩いたことも、大幅に遅刻したことも、すべては娘が前を向くための、優しくて大切な“心の整理の仕方”だったのだ。

少し軽くなった娘の横顔を見ながら、私は心の底から「本当に良かった」と、温かい気持ちでハンドルを握り直した。

大阪/吉野幸女 




2026年07月13日(月) No.789 (日記)

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