誰にとっての正解
今回より、泣き笑い日記の仲間入りをさせていただきました東京の加藤です。
今しか書けないこと、今だから書けることを言葉にして、残していきたいと思っています。
私とハートフルコミュニケーションとの出会いは、数年前に遡ります。長男との関係に悩んだことがきっかけでした。
現在12歳の長男は、思春期の入り口にいる気配を感じますが、まだまだ仲のよい関係で、日々を楽しく過ごせています。
しかしそんな私と長男の関係は、新生児の時からうまくいっていませんでした。
私にとっては、初めての子ども。産前の母親学級で習った通り、産まれたら直接授乳すればいいと思っていたら、我が子はうまく飲めませんでした。
空腹で泣きやまない息子。人工母乳に頼らず、なんとか直接授乳したい私。なんでうまく飲めないの?なんで?なんで?母乳外来にも通い指導を受けるも、効果はありません。結局、搾乳したものを冷蔵庫で保存し、温めて与えるという手間のかかる方法をとりました。
夜中に長男が泣いたら搾乳する私。長男に哺乳瓶で授乳して、終わったら搾乳の機械や哺乳瓶などを鍋で湯を沸かし、消毒する夫。二人とも寝不足の毎日でした。それでも、人工母乳に頼ることのできなかった私の「べき」に対するこだわりの強さは、振り返ってみれば本当に強力だったと思います。
他にも、食事はバランスよく食べさせなければ、何時までに寝かさなければ、幼稚園に入るまでにはおむつを外さなければ・・・挙げればきりがありません。
私の中にある「こうあるべき」という思いが強く、教科書通りにいかないことに「なんでうまくいかないの?」と不安が大きくなっていき、イライラして余裕のない子育てをしていました。
口うるさく「べき」を押し付けていちいち注文をしてくる母親に対して、当然長男はノーを主張してきました。ひどい時は毎日喧嘩していたこともありました。
小学校中学年のころ、長男の手足の爪が、どんどん短くなっていくことに気がつきました。私も毎日しんどいが、長男自身も相当ストレスフルなのだという心の声がそこには表れていました。
このままでは、二人ともどうにかなってしまう。産まれた時からやり直したい。そんなのできるわけない。どうしたらいいのか、わからない。悩みに悩んだ末に、ハートフルコミュニケーションの講座を申し込みました。
ハートフルコミュニケーションでの学びを通じて、一番大きかったことは、長男と私は違う気質の人間なのだということに気がついたことです。この当たり前すぎることに、気がつくことができました。母親として、なんとか私の思う良い方向に長男を成長させなければと奮闘していました。
しかし、私と彼は違う人間で、彼は彼の人生を生きている。私の「べき」を彼に押し付けても、それが彼にとっての正解かどうかは分からないのです。違う人間なのだから、感じ方や考え方が違い、そこからとる行動も違うのは当たり前なのだと理解した時に、フッと気持ちが楽になりました。
まず取り組んでみたのは、私が黙ること。思い返してみれば私の関わり方は、取調室の刑事のように私の知りたいことを彼に尋ねるか、鬼軍曹のように自分のやり方を彼に押し付けるだけでした。彼自身を深く理解しようとすることは、ほとんどしてこなかったのです。
しかし、友達のこと、勉強のこと、やりたいことなど話を振ってみると、彼は自分の言葉で話してくれました。彼なりに感じたり考えたりしていることがあったのです。
もちろん、今でも私の「べき」が顔を出して、黙れないこともあります。本当に回数は減りましたが、たまには言い争いにもなります。それでも、喧嘩になった後に、本人はどう思っているんだろう?と考え、話し合うことができるようになりました。
長男の人生には、これからも初めてのことがたくさん待ち構えています。心配性な母親としては、「こうしたら正解」と言いたくなることがたくさんあります。しかし今は、その思いを全てを口にする前に、考えて立ち止まり、そして彼ならどうするのか、様子を見ることもありますし、どうしても心配な時は彼にどう考えているのか、どうするつもりなのか話を聞き、その上で伝えなければいけないことは伝えるようにしています。彼の判断を尊重して、例え失敗するとしても彼の人生だから、そこから成長してほしいという思いで、これからも彼をサポートしていけたらと思えるようになりました。
もし産まれた時からやり直せるのなら、今もやり直したい気持ちはあります。しかしそれは、今が苦しいからではなく、今の私なら彼と何倍も愉快な時間を過ごすことができると思うからです。
私が「べき」を手放して彼自身を認めたことで、彼の表情も明るくなりました。私自身、長男に対してずっと言えなかった「大好きだよ」という言葉を、心から伝えることができるようになりました。照れながらも嬉しそうにしている彼の様子に、最初は彼に届いていなかった私の言葉が、徐々に受け入れられていることを実感し、本当に幸せな気持ちになります。
この日記を書くにあたり「ハートフルコミュニケーションを学んでお母さんは何か変わったか?」を、長男に聞いてみました。答えは「いろいろあるけれど、一番は俺のマイペースなところを認めてくれたところ。あとは、話を聞いてくれるようになったところ。」だそうです。対話を重ねてきた日々が、私たち親子の距離感をグッと近いものにしてくれました。
私の「べき」から生まれる焦りや心配は、この先もずっと続くと思います。なぜならそれは、私の気質だから。それも理解したうえで、これから彼が自分の人生の正解を見つけていく過程を、見守りたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。次の松下さんへ、バトンを渡します!
東京都/加藤夕紀子
2026年08月03日(月)
No.792
(日記)


