ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

小さな私が、気づかせてくれたこと


まだまだ寒い日が続いていますが、日差しはようやく春めいてきました。東京の佐藤です。
島さんの素敵な親子関係に、憧れます。私もいざという時に、子どもが相談したいと思えるような親でありたいと、先日お友だちとお茶をしていた時に感じたばかり。まさに島さんの記事はタイムリーでした。

そのお友だちとは息子が生まれた時からのお付き合いで、お互い小学2年生の息子がいることもあって、会えば話しは自然と子どもたちの近況報告で盛り上がります。その日も、いつものようにお互いひとしきり話し終えると、彼女がそういえば最近困っていることがあると打ち明けました。
息子さんが習い事の空手に行きたがらないというのです。

本人がどうしても習いたいと言うから始めたのに、何があったのか急に嫌になってしまったようで、ここのところ空手に行く時間になると、決まってお腹が痛くなるというのです。
「ねえ、そんな都合よくお腹痛くなるもんかね…どう思う?」
友だちは息子さんが空手を避けるために仮病を使っているのではないかと半信半疑でした。真面目な彼女だけに、我が子には嫌なことにも負けずに立ち向かっていって欲しい、という頑なな思いが感じられました。

その時、私は幼い頃の自分を思い出しました。
幼稚園のお昼の時間が苦痛で、お弁当のフタを開けるたびに、吐き続けていた日々。ほとんど毎日のことだったので、先生もうんざりしていたのを今でも鮮明に覚えています。
彼女の息子さんも、仮病ではなく、もしかしたら本当に身体が拒否反応しているのかもしれない。それを伝えるために、私は何気なく吐き続けた過去を話すと、彼女は目を丸くして聞いてきました。
「どうして吐いちゃうの?お弁当に嫌いなおかずが入っていたとか?」

そういえば何が原因で吐いていたのか、これまで一度も考えてこなかったことに気づきました。40年も前のことです。3、4歳だった当時は幼すぎて、その苦しさの正体が何なのか、誰かに説明して理解してもらえるような思考と語彙を持っていませんでした。

あの頃、一体私は何に反応して吐いていたのだろう…

改めて当時感じていた感情を頼りに幼児期に遡ってみると、幼稚園で幼いながらも気丈に振る舞っていた小さな私が現れました。お昼になり、少し胸のあたりが苦しくなるのを感じながらお弁当箱を開けると、母が一生懸命作ってくれたおかずが目に飛び込んできました。その途端、あったかい母の温もりをすぐそばで感じ、恋しさはピークに。母がここにいない不安と孤独に耐えきれず、胃が反応して吐いてしまうのでした。

「手作りのおかずを見ると我慢していたママを思い出して苦しくなったみたい…」
私は他人事のように蘇った感情を話し始めると、急に涙がとめどなく溢れてきて、我を疑いました。幼い自分が泣いているのか、大人になった今の私が泣いているのかわからなくなりながらも醒めた頭で、あの時の私は本当に辛かったんだな…としみじみと感じました。
「よく頑張ったね…もう大丈夫だよ」と、小さな自分に語りかけると、堰を切ったように寂しさが溢れ、涙と共に昇華して行くのがわかりました。

「きっと人生初のすごい苦難だったんだね。よく乗り越えてここまで大きくなった!」
落ち着きを取り戻した私を見て安心したのか、彼女が少しおどけて言いました。
「その後の人生もすごかったよ。ほんと、色々あったさ。よくここまで頑張ってきた。偉いぞ、私」
私も場を和ませようと大げさに言うと、彼女は
「ほんとだよ!まだこの先も色々とあるんだろうけど…いやぁ息子の人生はまだはじまったばっかりだから、長いなぁ…」
と、遠い目をしました。
「でもさ、この先の長い人生から見たら、息子たちの今なんて、一瞬だよ。点みたいなもん。点、ドット!だよ」
「ドット!そう考えると息子の悩みもちっぽけに思えてきたわ」
と彼女が笑いとばしました。
「なんでもそんな風に大局的に物事を見られたら、何があってもどんと構えていられるんだろうね。実際は感情がついてかないけど…」
私は、日々の息子とのやり取りを思い返して反省しました。
「そうだね。でも私はこれから深刻になりそうな時こそ、そういう視点を心がけてみるわ。だって思いつめずに済んでラクそうだもん」と友だちは歯を見せて笑うと、息子にとってもいいような気がすると言いました。
そのしなやかさが、彼女のすごいところだなと感心しました。

私たちはこれまでたくさんの苦難を乗り越えてここに存在することに、もっと胸を張っていい、そんな自分をもっと信じたいと思いました。時に辛すぎて逃げたって、大丈夫。幸せはいつだって自分の思いひとつで実現することを、息子が試練に遭遇した時に話してみよう。
そのためには悩みを相談されるような親になるよう、もっと息子の話に耳を傾け、受けいれる努力をしようと決心したのでした。

愛知の児島さん、バトンをお渡しします。
お話、楽しみです。

東京都/佐藤英子 





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