ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

伝わるように、伝える


さいたまの落合です。
渡海さんの、「大発見をします。『本を読む事は、何通りもの人生を生きるという事だ』」の一節を読んだときに、何通りの人生の送る人からのメッセージを受け取ることができるんだと思い、世界が広がった感覚になりました。

助産師をしていると、嬉しいことにたくさんの方に会うことができます。そのなかには外国人の方もいらっしゃいます。コロナウイルスが蔓延した頃から、日本に住む外国人妊産婦さんに、NPOのスタッフとして月に1回程度、同じ国の言葉を使う人たちのグループごとに通訳さんと一緒にオンラインの相談に応じています。

先日、「やさしい日本語」(医療版)という研修をうけてきました。
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語のことです。始まりは阪神淡路大震災で日本語を母国語としない方々の被災件数が多かったからだそうです。少しずつ普及し現在では漢字にルビを振ることや、「避難」と言う漢字を「すぐに、にげて!」わかりやすい言葉で表示しなおされるように工夫がされているとのことでした。

かつて海外で体調を崩したことがありました。症状を辞書で調べ書き出し、病院を探せずホストファミリーに相談し、病院を探し連れて行ってもらって受診したことを覚えています。処方箋を持ってドラッグストアへ買いに行くということもしました。
今のように翻訳アプリがない時代だったので、外国で母国語ではない言葉を使って説明すること、病院にかかることの一連の流れは大変でした。そして、言葉は違くても話すことができる人が身近にいたこと、橋渡しになってくれたことは、とても有難く安心したのを覚えています。

研修の講義が進み、外国人留学生に模擬患者役になってもらうグループワークになりました。
「易疲労感」(いひろうかん)をやさしい日本語で相手にどのように伝えるか? と質問が投げかけられました。「易疲労感」は医療者がよく使う用語です。助産師である私でもこの職業につくまでは知りませんでした。

私は、まずは漢字を分解して伝えようとしました。
「簡単に、疲れる、感じますか?」
変な日本語で伝わりません。
ひとつずつ質問しようとして「疲れますか?」と尋ねると、「いまは疲れていない」と返事がきました。聞きたいことはそうではない…。「疲れやすい?」や「ずっと疲れていますか?」では、彼らにとっては、理解できない表現とのことです。

さて、どう表現したらいいのか?
言葉が通じないと感じると、話すテンポがゆっくりになってジェスチャーが大きくなるばかりで、一向に伝えることができませんでした。そして模擬患者さんの表情は困った様子でした。

そこで、まわりの参加者に助けを求めました。
カレンダーで日にちを見せながら「この日は疲れましたか?」と尋ねたり、「疲労」という言葉にフォーカスせず、「眠りますか?」「食事はたくさん食べますか?」と柔軟に確認していくなど、新たな視点を得ることができました。

私も、目で見てわかるようにカレンダーを指しながら、「いつも、食事をたくさん食べますか?」と伝えてみると、「その表現はわかります」と言ってもらうことができました。
私の日本語が「伝わった」とほっとしつつ、他の方法で言い換えることができた小さな達成感がありました。言葉の意味ばかり考えていた自分にも気づきました。

私は「やさしい」の解釈を、「易しい < 優しい」と取り違えてしまっていたのでした。易しい簡単な日本語で言い換えられず伝わらない時は、優しく接したり手取り足取りお世話をしていたことに気づきました。しかし、どこかすっきりしないモヤモヤは残っていました。

この研修を経験して、『子どもの心のコーチング』の本の一章を思い出しました。相手がその能力を発揮する前に手を出すのがヘルプで、相手が能力を発揮できるよう手助けするのがサポート。
私は相手の日本語の理解度に疑問を持っていました。「伝わらなかったらどうしよう…」と恐れ、相手のことを信じず、学んだ技術で何とかしてしまおうとしていました。すなわちヘルプだらけだったのです。
加えて、自分もかつて同じような立場になったことがあることと、外国人への日本語対応経験もあったので、少しは他の参加者よりもできるに違いないという思い込みもありました。
でも、実際は違いました。

日頃の自分の話し方を思い返してみても、私は思いついたことを次々と話してしまう傾向があります。
もしかしたら職場でも、時には家庭でも難しい言葉を多用していたり、略語を使ったり、伝えたいことを一方的に話してしまったり、相手の反応を気にせずしているかもしれない。相手が理解できないような話し方をして、相手に伝わるように話せていないことがあると気づきました。

以前、誰でもわかるように表現するには小学3年生が理解できるくらいわかりやすくするといいと聞いたことがあります。そのときに学んだことや、話し方、伝え方、口調、声のトーン、自分の癖に意識しながら話すだけで、会話がはずんだ印象がありました。それを意識するようになるだけでも、相手に「伝わる」ことが増えそうです。特に妊婦さんや子育てママさんには、初めてで分からないことだらけで不安に陥りやすいので、役立つと考えます。

誰にでも伝わる、「やさしい日本語」を伝えいくために、グループワークで学んだように一文を短くしたり、実物を提示した伝え方を意識して日常に取り入れいきたいと思います。
そうすることで母語を日本語に持たない人だけでなく、家庭や職場とのコミュニケーションのキャッチボールがスムーズになり、相手を思う気持ちが生まれ、聴く耳を持つ、耳を傾ける人達が増えると思います。
今回新しいことを学んだので、今後も「やさしい日本語」の学びを続け、自分のまわりの人たちにシェアをしていきたいと思います。

それではチャウさんにバトンを繋ぎます。

埼玉県/落合陽子 






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