ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

モヤモヤ


秋は断然「食欲の秋」のさいたまの上村です。
日常の出来事からたくさんの気づきを得て、どんどん進化していく名和さん!コミュニケーションエラーと聞いて、私も思い当たる節が…。

私は子どもの負の感情をそのまま受け入れることが苦手です。
嬉しかったことや楽しかったことは一緒に喜んだり笑ったり子どもの気持ちを受け止めることができるのですが、そこに少しでも不安や怒りなどの感情が入ってくると、とたんにモヤモヤし始めます。
以前は、子どもに何かあったとき親なら誰だって平常心でいられない。モヤモヤするは当たり前、仕方がないことだと思っていました。
だから次男が中学2年生の頃、友だちとのトラブルを話してくれたときもそうでした。
学校から帰ってくるなり明日は学校に行きたくないと言うのです。何人かのクラスメートにからかわれたり、ちょっかいを出されたり、ときには嫌味を言われたりするのが理由でした。「ああ、お兄ちゃんのときもあったな。中学男子によくあることだ」そんなふうに思いながら話を聴いていましたが、そのときすでに私の中でモヤモヤが始まっていました。
そして「相手にしなければいいんじゃない?」「担任の先生に相談してみたら?」と気がつくと息子の話に割り込んで解決策をあれこれ提示していました。
息子は納得いかない様子で話を切り上げてしまい翌日から2日ほど学校を休みましたが、3日目に登校した朝、保健室の先生のところへ直行し話を聴いてもらったようです。帰宅した息子は数日前のことがウソだったかのような元気な笑顔を見せたので、中学男子のいざこざってそんなもんだよね、などと気軽に考えていました。

ですが、それからしばらくして『子どもの心コーチング』を手にする機会があり、パラパラと拾い読みをしていた私は「子どもの感情や感覚をそのまま受け入れよう」という見出しを見てハッとしました。その章のなかに、
「子どもの否定的感情(悲しみ、苦しみ、つらさ、悔しさ)や痛みを受け入れるのがとてもつらいからです。親は子どもにいつも幸せでいてほしいと願っています。ですから、子どもの否定的感情や痛みを認めるのが嫌なのです。親の安心のために、否定的な感情や痛みを感じてほしくないのです」と書かれていました。
まさにこれだ!と思いました。数日前、息子と話したときに私の中で起こったことだ!と。
あのとき息子の話を聴きながら私の心はすぐに息子から離れていました。
息子の感情に寄り添い共感することよりも、どうしてこの子は強い気持ちで相手に向かっていけないのだろうという苛立ちと同時に傷ついて立ち上がれなくなったらどうしようという不安が先に立っていました。それがモヤモヤとなって広がり、この気持ちを私の中から一刻も早く取り除きたいということに向かっていたのです。
加えてこれがきっかけで学校に行けなくなったらどうしようという思いが襲ってきたのだと思います。中学に入学して間もなく1カ月半ほど登校できなかったことがあり、また同じことが起るのではないかという恐怖に似た感情があったのかもしれません。だから私は早く解決しなければと焦り、息子が悔しい、つらいと訴えても「相手にしなければいい。気にしすぎるのはよくない」と息子の感情を次々に否定していきました。

本を何度も読み返しながら私は保健室の先生の顔を思い浮かべました。そこには思いのたけをぶつけている息子の姿も見えました。きっと先生は優しく真剣なまなざしで息子の話をじっくり聴いて、一緒に怒ったり、悔しがったり、「それはつらいよね」と声をかけてくれたに違いありません。学校に行けなかったあの時期も辛抱強く息子に寄り添ってくれました。それ以来、息子は先生に心を許し、信頼し、ときにはふらりと、そして自分一人では解決できそうにないことが起ったときは真っ先に先生のところに足が向くようになっていました。このときも息子は自分の感情と向き合うために先生に助けを借りに行ったのです。
きっと先生は、息子がそんなに「弱くない」ということをわかっていたのだと思います。それをわかったうえで、しっかりと話を聴いてくれたのです。だから息子は話を聴いてもらえた、自分の気持ちを受け止めてもらえたと思え、安心したのだと思います。
私にはできなかったことでした。

まず私に足りなかったのは「子どもの力を信じる」こと。この子はそれほど弱くないと息子の力を信じることができていれば否定的感情も痛みも受け止められ、最後まで話を聴いてあげることができたでしょう。実際に息子は自分の感情と向き合って、自分で考えて行動を起こす力を持っていました。決して弱くはなかったのです。
そして私自身が初めてはっきりと自覚したのは、「息子の感情より自分が安心できることを選んだ」こと。これまでの子育ての中でも同じような場面が何度あったかしれません。その多くを自分が安心するために子どもの感情を受け入れてこなかったことに気づきました。
あのモヤモヤの正体は、自分の安心のために子どもの否定的感情や痛みを認めたくないという私自身の心のざわめきだったのだと知りました。

「子どもはそんなに弱くないと知ってください。痛みや悲しみがそこにはないようなふりをさせるより、その感情を認め、共に感じ、包み込んであげましょう」(『子どもの心のコーチング』より)
この一文を私はお守りのように手帳の表紙の裏に書き留めています。
そして事あるごとに読み返しています。それは自分が安心するためではなく、息子のどんな感情も認め、共に感じ、包み込んであげられるようになりたいから。ここぞというとき、息子の一番の理解者になれるように。

埼玉県/上村明美 






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