ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

あたまをぽんぽん


◆◆◆ 第3回 オンライン・カフェ リレーブログ談話室のご案内 ◆◆◆
今週のブログを題材に、「オンライン・カフェ リレーブログ談話室」を開催します。
お読みになった後の、「もうちょっと聴きたい」「もっと知りたい」「みんなはどう?」を、菅原裕子や執筆コーチたちと語り合いませんか? 子育てのアイデアやコーチングのコツも手に入るかも!
【日時】 8月1日(土)14〜16時
【参加費】 無料
【方法】 ZOOM(初めての方にはお申し込み後に使用方法をご説明します)
【お申し込み】
https://ssl.form-mailer.jp/fms/734c24ea672018
◆*◆*◆*◆*◆

埼玉の上村です。
無意識の中に愛を感じ、愛を残しお互いの人生を支え合ってきた名和さん親子。〈至福の時間〉の中にほのぼのとした温度を感じました。愛って深いなあ。愛っていいなあ。

これまで私がここで書いてきたことは体験や経験を通してのことでしたが、今回はまさに渦中。だから自分自身の今の気持ちをそのまま書くことにしました。

高校3年の次男は7月から登校していません。学校再開から1週間で気持ちがついていかなくなり、学校に行きたくないと言い休み始めました。始めは疲れが出たかなと様子を見ていましたが、いっこうに登校する気が起きない次男に私はイライラを募らせていきました。
次男は中学入学直後に登校できなくなったことがあったので、そのときの経験からまわりがとやかく言っても本人の気持ちがそこに向かっていかない限りどうにもならないとわかっていました。そしてある日何事もなかったかのように元の生活に戻っていくことも。
わかってはいるのです。経験から十分にわかっているのに私のイライラは募るばかりでした。そこには高校3年の大切な時期という想いがあるからでした。
コロナ禍で授業や受験勉強も大幅に遅れ、時間がないという焦り、このまま休み続ければ高校の卒業資格を失うのではないかという不安。結局私の気持ちの大部分を占めているのは次男が傷つくのが嫌だ!という想い。彼はそんなに弱くない…と思っているけれど、考え始めると胸が苦しくなってしまうのです。

さまざまな負の感情の波がざぶんざぶんと押し寄せてきます。
休み始めて1週間目の週末、ついに私はどうして登校できないのかと次男に詰め寄りました。行けない理由は何なのか、どんな気持ちでいるのか言葉で伝えるように迫ったのです。
次男は、大きな体を小さく小さく丸め、「自分が情けない」「ただ自分にイライラするだけ」そして「お母さんに迷惑をかけている…」と言い嗚咽しました。
言わせただけだ。私はこんなにもがき苦しんでいる次男に追い打ちをかけ心をえぐり、私が抱えていた不安をぶつけただけだと我に返りました。
何のために?誰のためにこんなひどいことをするのか。あとは後悔と懺悔しかありません。私は次男の背中をさすりながら一緒に泣くことしかできませんでした。

週明け、次男が幼い頃から通っている小児科に行きました。中学のときもお世話になっているので、次男は先生をとても信頼し気さくに何でも話します。登校していないことを告げると先生は顔色ひとつ変えることなく、「世の中がこんなときなのだから無理して学校へ行くことないわよ。」とこともなげに言いました。診察室から出てきた次男は安堵の表情を浮かべ「あんなふうに言ってもらえると思わなかった」と私に笑顔を向けました。

次男の笑顔にほっとした私は、その日の午後、「コーチングをしよう!」と声をかけてみました。白紙の用紙を次男の前に置いて学校に「行く」と「行きたくない」という軸から派生する気持ちを書き出してみることにしたのです。するとやり取りを進めていく中でいくつかの気持ちがはっきりしました。
それは「今の高校を卒業したい」、「大学へ行きたい」ということ。続けてなぜ大学に行きたいのか、大学卒業後に就きたい職業など未来について次男はとても楽しそうに話してくれました。そして学校については、学校は好きだ、友だちといると楽しい、授業も嫌ではない、行きたくない理由は自分でもはっきりとはわからないけれど、「学校や塾に縛られたくない」、「俺流があるからあれこれ言われたくない。放っておいてほしい」という想いがあることが見えてきました。
そのあとは自分の希望を叶えるために今できることを考えました。まずは生活リズムを整えるために毎朝8時のゴミ出しを担当する。9時から机に向かう。塾の映像教材を使用した復習中心の勉強、成績に関わる学校の試験と模試に向けての勉強に絞りやっていくことなどを自分で決めました。
私の質問に答えながら、手を動かし言葉を書き留めることで気持ちを整理し、いろいろな自分の想いに気づいたようです。最後に「俺にとって、家は安心・安全の場所だから、駅まで行くと途端に不安になるんだよね」と言い、「話してスッキリした」と笑いました。

この日を境に次男にある行動が増えたことに私は気がつきました。それはハグ。
自室からリビングに降りてきたときなどにふらっと私に近づきながら両手を広げます。そしてお互いにゆる〜く抱き合いながら私は次男の背中を軽くたたきます。すると彼は身をかがめて私の肩にあごをのせ、不安を体から押し出すようにふう〜っと息を吐きます。それはまるで小さな子どものようなしぐさです。私は少しでもぬくもりが彼に伝わるように、少しでも彼の心のさざ波が鎮まるように背中に回した腕に力をこめます。

私は今の仕事に就いて16年目になりますが、ずっと一緒に働いている仕事仲間に先輩お母さんがいます。今では孫がいる彼女もふたりの息子の子育てをしてきた頼れる大先輩です。
これまでも育児の悩みをさんざん聴いてもらっていたので、いつものように彼女に息子の話をしました。じっと聴き入ってくれていた彼女は私の話が終わると「ママ、よく頑張ってるね!」とにっこり笑い、私の頭をぽんぽんしてくれたのです。
その途端、すう〜っと体の力が抜けていきました。たった3秒のことです。
それなのに「気持ちを受け止めてもらえた」と感じたのです。
そして同時にわかりました。ハグの意味が。次男が私に求めていたのはこれだったんだということが。〈あたまをぽんぽん〉辛いんだね。頑張っているね。わかっているよ。

次男は今も葛藤中です。
7月の2週目に2時限だけ授業に出て、先週は試験を受けるために朝から登校しました。
前の日からもこもこと湧いてくる不安を口にしつつ、振り払いつつ、友だちと夜中まで話していたようですが、寝てしまうと朝が怖いと言って一睡もしないで登校していきました。
なんとすさまじい戦いなんだろう。不安や恐怖をなんとか封じ込め、「じゃ、行ってくるね」とふわっと笑みを浮かべる彼の心情を、そのすべてをわかってあげられない不甲斐なさも相まって後ろ姿を見送りながら切なくて涙がこぼれました。

人の心はとても繊細です。自分の中で何が起こっているのか自分でもわからないというのは特別なことではありませんが、そこでは不安や焦燥、恐怖…さまざまな自分の感情と対峙しなければなりません。もがきながらも立ち向かおうとする彼の姿に胸を打たれます。
それでも次男の笑顔や元気な姿を認めると私の中で妙な期待が胸をかすめます。明日は登校できるのでは?何事もなかったかのように動き出すのでは? その期待が次男を、私自身をも苦しめることになると自覚しながらも、湧きおこる気持ちは否定できません。
だから何が一番大切なのかを私は胸に刻みます。何物にも代えられないもの。それは彼の笑顔です。安心したとき、自分の気持ちに正直になれたとき、未来を夢見て心躍らせるとき…そんなときの笑顔がありのままの彼を映していると思うから。次男はまだ18歳。これからです。心から笑顔になれたとき、またそこから出発すればいいと思うのです。

埼玉県/上村明美 



▶▶▶ オンライン・カフェ リレーブログ談話室のお申込は こちら 。ご参加を心よりお待ちしております。













2020年07月27日(月) No.470 (日記)

No. PASS