自分で切り開く力を信じて
東京の本藤です。
中溝さんのお話、お子さんの学習サポートから広がっていく探究心がとても素敵だなと思いました。そして、原子論の視点でご自身やお子さんのことを語る面白さから、私も元素記号に親近感が湧いてきました。
さて、あっという間に9月半ばですね。まだコロナウィルスの感染状況が心配ですが、通勤・通学も通常通りに戻ったところも多いようで、これからはウィズコロナ時代として新たな緊張感が増えてくるのかもしれません。我が家でも、次男の学校で2学期から通常登校再開が決まり自然なこととして受け止めつつも、ちょっと違う緊張感が走りました。
「さぁ、どうする?」「そろそろ決める時期かもしれないね…」
あることをきっかけに大好きだった学校に行けなくなった次男に、大きな分かれ道が現れました。学校に戻るか否か…。
大好きな部活動には参加できるようになり、友だちの励ましもあって「そろそろ学校に行く」と決意したのがちょうど半年前。徐々に顔色もよくなってホッとし、「できることがあったらいつでも言ってね」と声をかけて臨時休校が解かれるのを待つのみでした。
それがいつの間にか中学卒業式も高校入学式も中止、授業はオンライン体制に変更になって、彼の決意に影響が出るのでは…と心配になり始めた矢先、「学校を辞める。もう学校に行く意味はない。」との発言。
その言葉がどういうことを意味するのか本当にわかっているのだろうか?と不安な気持ちに襲われ、私の気持ちも揺れ動きました。その一方で、学校に行けなかったつらかった日々を思うと、彼がすべてのことから解き放たれて自分らしくいられることがいまの彼には必要なのかもしれない、とも思ったのです。
学校に行けなくなった頃はよく昼夜逆転やゲーム三昧の日もあり、どうしたものかと頭を悩ませていましたが、先日の学校を辞めるという発言をして以来、ちょっとずつ様子が変わってきました。生活リズムを整えようと早く起きたり、筋トレをしたり。自分を律しようとしているのかなという感じです。ただ、閉じこもりがちで調子が悪そうな時も無きにしもあらず、心配して声をかけてみると「放っておいて!」とシャッターを下ろされます。
そんな次男に私ができるのはちょっと離れて見守ること、そして、話ができそうな時だけ話を聴く、それくらいです。ちょうど2週間ほど前、「あー、やる気がでない。やる気ってどこから出てくるんだろうか?」と呟いてきました。私は次男の近くに座ってちょっと一緒に話したあと「そういえば、お母さんも高校生の時に…」と話します。そして、「大学3年の夏にもう限界!と思って決断したんだよ」と、消極的な思いから留学につながった話。他愛もない話には食いついてきて、彼の表情が明るくなっていくのを見て嬉しくなります。
8月上旬、学校から通常登校体制のお知らせが来た時、あぁ正面から向き合わないといけないなーと、私もやっとで腹をくくりました。決断の先送りが続いていましたが、学校との話し合いを動かす時が来たのです。
次男の調子がよくて話ができそうなタイミングを見計らい、学校からの連絡を伝えて「どうする?」と切り出してみました。すると、「なんで今更! もう辞めたと思って過ごしてきたんだから変わらないよ」という返事。全く悔いがないことがわかり、それならば自分でその意思を担任の先生に直接伝える必要があることを説得し、2学期開始直前に担任の先生に面談をお願いしました。
学校に行けなくなったきっかけが対人関係だった次男にとって人と会うことが大きなハードル、でも面談は彼自身が自分の人生を踏み出すためには避けては通れない過程です。
久しぶりの先生との再会に緊張しつつも力の入った声で「学校を辞めたいと思っています。」と次男からの一言。そして、先生からゆっくりと、「お母さんから話は聞いているよ。君を尊重したいと思っている」という言葉。
溢れそうになる涙をこらえる私のそばで、次男は受け入れられた安心感で少し和らいだ表情を見せていました。予想よりも自分の考えをしっかり話していたのには私も驚きでしたし、学校からの帰り道でずっと話し続ける次男を見て、これでよかったんだと私の気持ちも楽になりました。
壁にぶつかっている次男を見て、こちらまで辛くなり本当にこれでいいのかと不安になったり、周りの目が気になったり、そんな時に長男から「放っておいて大丈夫だよ。自分で一からやっていくでしょう。周りは勝手に言うだろうけど助けてくれるわけじゃないからね」と身に染みるアドバイス。思わず背筋を伸ばして、この子たちを応援しなければ!と思いました。
いま、次男は新しい環境を見つけ自分の道を歩み始めています。それは、与えられた道や守られた道ではなく、自分で一つずつ組み立てていく道であり、これからはいくつもの試行錯誤や自分との対話が待っているでしょう。
以前いつだったか「本当の自由には責任がついてくるもの。そうでない自由はおかしいと思う」と次男が言ったことがありました。
その時は深く受け止めませんでしたが、その考えは彼の大切な軸の一つに違いないと感じます。この先自律できるようになるまで長い道のりでしょうが、彼自身が自分らしさを見つけ、楽しい、やりたいと思うことに向かって突き進んでくれたらと願っています。
彼の決断を祝福しつつ、彼の成長を楽しみにして、私もしっかりサポートしていきたいと思います。
それでは、山田さんにタスキを渡します。
東京都/本藤克子
2020年09月14日(月)
No.477
(日記)