ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

アイテムを増やしてダンジョンクリア!


石垣さん。ご無事で何よりでした。いま目の前にある日常は、幸せに満ちていて、でも気づかない。足るを知り、感謝の気持ちを忘れずに過ごしたいと思います。

東京の平沢です。

現在、中学3年生の次男は、小学生の頃から不安症な傾向が強く、特に初めてのことをする・場所に行くとなると、気持ちが悪い、頭痛、腹痛、頻尿といった症状がよく現れました。なので、そうしたときは、事前にどんなことが起こりそうかシミュレーションして伝えたり、同行できれば一緒に付いていったりと、不安解消対策をこうじて過ごしていました。

中学校にあがり、初めてのことが多くなったからか、登校前に、「なんとなく気持ちが悪い」といった症状を口にするようになりました。けれども、「大丈夫! 学校に行けばよくなるよ。友達と話していたら大丈夫になるんでしょ?」と軽く受け止めて過ごしていました。実際、学校に行けば問題なく過ごして元気に帰宅してきたからです。また、私の中でも、「中学生になったんだから、親が心配しすぎるのもよろしくない。環境に慣れて、自分で対処できるようにならなくちゃ」という思いもありました。

その根底には、私自身の「できた体験」がありました。実は、私も幼少のころ同じ症状でつらい思いをしました。けれども中学にあがると症状も収まってきて、たまに気持ちが悪くなっても我慢して登校し、部活も休みませんでした。そんな自分のできた体験から、「私ができたのだから次男だってできるはず」「周りの子は普通にできている」「ここで甘やかしてはいけない」と自分本位なストーリーを展開。そこには次男の「いま」に思いを馳せ、寄り添う視点はなく、「大丈夫だよ!」と口では励ましながら、『登校して当たり前、部活を休む?何よわっちぃこといってるの!』といったオーラを出していたように思います。素直なタイプの次男は、そんなオーラを感じとっていたようで、具合が悪くても逆らおうとはしませんでした。

ところが、中学1年生の夏休み終盤、ひどく暑い日のサッカー部活動中に、気持ち悪くなり、本当に吐いてしまったことがきっかけで、次男の体調不良が悪化。2学期が始まる頃には、朝から頭痛やら気分が悪いやらで朝、なかなか起きられず、なんとか登校しても頻繁に保健室に行くといった状況になりました。

学校生活がままならなくなって、私の自分本位の考えで次男を追い込んでいたことに気づきました。次男の「いま」に照準があったのは、そのタイミングからでしょうか。色々な対策は練ってきましたが、本腰を入れて症状改善に向けて取組みをはじめました。
まずは、深刻な病気かもしれないと、かかりつけ医に診てもらいました。が、身体的には特に問題なしとの診断でした。となると、やはり不安が高じて起こっている症状と絞り込み、ネットで調べて思春期に多い症状だと狙いを定めて、どう対処すればよいかをピックアップします。
夫や長男にも相談。朝食担当の夫は消化のよい食べ物を出すようになりました。長男には、中学のとき同じような症状はなかったかをリサーチ、自分にはなかったが次男と似たようなケースの友人がいて、スクールカウンセラーに相談することで改善したとの情報を得ることができました。
そうして対策を練り、なんとか日々をやりすごしていましたが、早々に症状が改善されることはなく本人もつらそうで、綱渡りのような日々を送っていました。

2学期も中盤となり、三者面談のタイミングで、次男も交えて担任の先生と話す機会がありました。先生も、体調不良で保健室によく行くようになった次男のことを心配してくれていたようで、その場で、保健室の先生、スクールカウンセラーへと専門の方々に橋渡しをしてくれました。面談が終わったその足で、保健室に行くと、保健の先生が、次男にどういう場面でどんな症状がおこるのかを細やかに質問し、場面場面での対処法を提案、次男も周りが協力して助けてくれることに安心した様子で、症状改善に臨む心構えができたようでした。さらに、長男が勧めてくれたスクールカウンセラーとの面談も予約もしてその日は帰宅。その後、次男と2者面談をしたスクールカウンセラーのK先生から電話があり、こまごまと面談での様子を話してくれました。
なかでも印象的だったのは、K先生のこんな言葉でした。

「不安になったときに、大丈夫と思える方法をたくさんもっておくことが大事です。コンピューターゲームでプレイヤーが集める“アイテム”ってありますよね。使うと体力が回復する“回復アイテム”とか、体力を強化できる“強化アイテム”とか。場面場面でそれを使うとダンジョンを効果的にクリアできるという。●君なりのアイテムが増えれば、不安になったときにそのアイテムを使って対処でき、そうした中で『大丈夫だった!』という経験が増えれば、今ある症状も収まっていくはずです」

なるほどアイテムか!
コンピューターゲームは全くしたことのない私ですが、要は強くなれる=不安を安心に変える道具を持っておくことかと、頭の中に絵が浮かびました。それまで、どうしたらいいのだろうと、快方への道筋が見えないままに霧の中を歩いている感じだったので、K先生のこの言葉で霧が晴れた感じがしたのです。

また、K先生曰く、この頃の子どもは身体的に未熟であると同時に、第2性徴期を迎えホルモンバランスも不安定。大人になれば体も大きくなり、機能も安定してくるし、なんとかできる知恵も経験も増え、不安感を自分で解決できる術があるかもしれないが、中学1年生だとまだまだそうはいかない。だから、今はあせらず取り組みましょうと。
いま、なんとかしなくちゃと思っていた私は、強くなれる未来の視点がもてたことで肩の力が抜けました。多くの子どもをみてきたというK先生の言葉は信頼でき、私の焦りもすぅっと消えてなくなったのです。

K先生の話はすぐさま次男を含め家族と共有。「アイテムを増やす」をキーワードに、こんなときはこれ!というアイテムを増やして症状改善に取り組みました。
集めたアイテムは、たとえば、吐き気止めの薬(今はお守りになっているアイテム)、朝、起きる前のストレッチ(血流をよくして起きやすくするアイテム)、朝礼の時の並び順(一番後ろにしてもらい、気持ち悪くなったらさりげなく保健室に移動できるアイテム)、などなど。次男が不安感を感じるシーンで使えるアイテムを、ときには自分で、ときには家族を含め周りの協力を得て少しずつ増やしていきました。
そうして集めたアイテムは、様々なシーンで効果を発揮し、半年後、中学2年生に上がるころには症状はほぼ改善するまでに至りました。

今にして思えば、自分本位の視点から、次男の「いま」に視点をうつせたことが症状改善の流れにのるきっかけだったと感じます。そして、家族がタッグを組んで症状改善に取り組み、学校ともうまく連携がとれてきたころから、次男の不安感が少しずつ安心感へと変わっていき、体調も徐々に快方に向かっていきました。
不安感から改善を目指すのではなく、安心感から改善を目指すスタンスにシフトできたことで、不安からくる体調不良のダンジョンを乗り越えることができました。

今後も様々な困難に遭遇し、克服していかねばならない試練が待ち受けているとでしょう。そんなときは、自分本位にならない、「いま」に視点をおく、そして、安心できる環境を作りつつ、周りに助けを求めてたくさんアイテムを増やし使うということで乗り越えていきたいと、心に刻んだ出来事でした。

では、この辺りで次なる安村さんにバトンタッチいたします。

東京都/平沢恭子







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