ハートフルコーチの泣き笑い日記　～NPO法人　ハートフルコミュニケーション～

大切な気持ち

埼玉の岩田です。

私には頑張る姿の安村さんしか目にしたことがありませんが、今年の大晦日はご自身の声に耳を傾けられて心も体もスッキリとされて良い歳を迎えられそうですね。

私は今年から、養護施設でボランティアを始めました。２時間ほど滞在して、小学校低学年の子どもたちとお喋りをするのですが、毎回別れ際に「また来てね」とか「今度はいつ来るの？」など可愛らしい言葉をかけてくれます。嬉しい反面、別れるときに辛いのでは？と揺れ動く私。
それは親と別れなければならない状況に直面した子どもたちである背景からそう思ったのでした。

しかし様子を見ていると、あまりにもあっさりとした反応でした。そして毎度訪ねるたびに、喜んでくれては「またね」と繰り返しました。
子どもたちはたくさんのボランティアが出入りしていることにすっかり慣れていました。職員さんに「後追いなどはしないのですか？」と訪ねると、風邪を引いて看病した後に帰らなければならず「行かないで」というようなことはあるけれど、そういった日も時々しかないとのことでした。

そのお話を聞いて、離れられないと思っているのは自分の方だと気付いたのです。
子どもたちの方はその時々を楽しんで、いつまた遊べるか分からないけどサヨナラすることを繰り返しながら、学習している、それなのに私はどうしてこんなに別れるとか離れることを快く思っていないのだろうと思いました。

幼少期にはたくさんの別れを経験しました。その度に、私は次への気持ちを切り替えることが苦手だったように思います。まわりのみんなは、何事もなかったように自分の道へ進み始めているのに私はいつまでもその場に留まっていたいと思っていました。

例えば、いちばん始めに思い出に残っている別れのエピソードは、毎日遊んでいたリカちゃん人形を手放す時でした。もう大きいのだからと、母が親戚の子にあげようと言いました。
内心は「嫌だ」と思いましたが、もう遊ばない物です。仕方なく「いいよ」と言いました。
もらってくれた人が喜んでくれるならと思い直し、それから嫌だけど手放すようになりました。しかしこの納得していない気持ちはどこにも消えていませんでした。

そのリカちゃん人形とは、たくさん遊びました。今日はこの洋服にしようとか髪型を変えようとか無心で遊んでいたような気がします。そしてリカちゃんサイズの食器や小物は見ているだけでもワクワクしてリカちゃんの世界に浸りながら、誰にも邪魔されず遊んでいる間はなんとも幸せな気分でした。

もうひとつ印象に残っている出来事は、ぬいぐるみを捨てるときです。ぬいぐるみには情が移って、燃やすことが可哀想な気がしてなりませんでした。その時には「ごめんね」と思いながらなるべく感情を感じないよう、目を瞑るように捨てていました。

今でも物を捨てるときには、無意識に選別して捨てられるものは捨てていますが、気持ちのこもったお手紙やプレゼントは残したままです。相手が届けてくれる気持ちが嬉しくて捨てられないのです。捨ててしまったらその気持ちごと捨ててしまうような気がするからです。

ということは私の場合、物よりもその物にくっついている感情が、そこに留めているんだなと思いました。そして私の心の中で起こっていることは、大切にしたい気持ちや幸せな気持ちはもちろんですが、可哀想に思う気持ちや手放してしまうことに申し訳ないという気持ちも渦巻いていたのだと思いました。

今まで私は別れの出来事が、良くないことのように感じてしまい、早く忘れてしまった方が良いのだと思っていました。いつまでも気持ちを引きずっているのは、まわりの人にも良い気持ちがしないだろうと、早く手放すべきだと思っていました。
しかしその渦巻いた気持ちのなかには、たくさんの思い出がつまっていて感情と共に私の中で生き続けていました。

その大切にしたい気持ちや手放したくない気持ちは、捨てる必要はなくいつまでも持ち続けて良いのだと分かりました。
物や人との別れにくっついた感情まで一緒に捨ててしまうのではなく、その時のたくさんの大切な気持ちは心の収納庫に保管したいと思います。そして、これからは施設の子どもたちの気持ちと私自身の子どもの頃の気持ちと両方に寄り添いながら、楽しい時間を過ごしていきたいと思います。
それでは渡海さんにバトンを渡します。

埼玉県／岩田元子　　

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2023年12月11日（月） No.650 (日記)