ハートフルコーチの泣き笑い日記

日々の発見やつぶやきなど。

ルーツになった先生との記憶


★★★ 第8回 オンライン・ホッとカフェのご案内 ★★★
季節ごとの恒例、「泣き笑い日記 オンライン・ホッとカフェ」。
秋カフェの時期がやってきました。
  【日時】2021年11月21日(日)10〜12時
  【参加費】無料
  【実施方法】オンライン会議システム ZOOM
  【お申し込み】
https://ssl.form-mailer.jp/fms/126b451a722913

読者と執筆コーチたちで気軽に語り合う、このカフェ。
今回話題にする日記は、 「親と対話すること」です。
親の老いや衰えと直面したハートフルコーチが、尊厳を守ることと辛い現実を伝えることとの間で揺れ、希望を見出すまでを綴った日記です。
日記を読んで、訊きたくなったことが浮かんだ方、
誰かと話したくなった方。
私も同じ立場という方。
オンライン・ホッとカフェに立ち寄って、肩の荷を軽くしませんか?
※ 前回までの様子はこちらでお読みいただけます。
★★★★★★

神奈川の秋岡です。
山本さんのご主人の話から、夫婦という関係をそのまま受け止めている様子が伝わってきました。そこからにじみ出るお二人の雰囲気になんだかほっこりと温かいものを感じ、こちらまで幸せな気分になりました。

さて、私は常日頃、子ども達にはその年頃にしか味わえない、人生のその瞬間をしっかり体験して味わってほしいと考えています。受験を終えて、この春中学校に入学した息子には、中学一年生だからこそ味わえる、例えば新しい友達との出会いや深い部分での友達との関わり、また部活動という体験を大切に、たくさん胸に刻んでほしいと思っています。
なので、勉強のことはほぼ気にしていません。どうせあとから勉強に向き合う時期は来ますし。しかし、こうして呑気に構えている親は少数なのか、息子に聞くと友達は事あるごとに勉強について親からの小言やお叱りを受けているようで、その結果息子は私のことを「変わった母親だ」と言うようになりました。

こんな私の考えの裏にはもちろん、ハートフルコミュニケーションで学んだ「子どもと親の問題を区別」し、子どもの行動は自分自身で結果を受け止める「責任」の考えがありますが、多少は元々持っていたもののように思います。
では、改めてそのルーツはどこにあるのかなと自分の記憶を探ってみると、私の幼少期に鮮やかな色を塗ってくれた先生のことが思い出されました。

その先生は、私の小学3年生の時、1、2学期だけ担任を受け持ってくれた方でした。どこかの小学校の校長を退任した後に、産休を取っていたクラス担任の代打で来てくれた先生で、最初に見た時はみんな「こんな歳とった人で大丈夫かな」と思って(今考えると大変失礼な話ですが、当時は8歳の子供ですから…)、距離をもって接し始めたことを覚えています。
ところが、その先生はこれまであった「学校ではこれをするべき」を悉く打ち破ってくれた先生でした。まず、毎日の宿題がありませんでした。周りのクラスの子から、それはそれは羨ましがられました。次に、体育の時間は決まった競技ではなくて、みんなでルールから話し合って決めたゲームを校庭に出て行います。ルールで決めてない予想外のことが起これば、またみんなで頭を使って話し合って新しいルールを決めました。そして国語の授業では、たまに何時間も使って先生が一つの物語をじっくり深く読んでくれました。ある友達は深くその物語の世界に入り込み、先生の音読でボロボロ涙を流していました。

日々を深く味わい、自分たちの考えを発し、それぞれの思いを受け止める教育。先生と過ごす毎日がとっても楽しく、みんな先生のことが大好きになりました。2学期の終業式、先生とのお別れの日はみんな大号泣でした。先生の周りに詰めかけて、わんわん泣いています。私も悲しくて悲しくて、どうにかこのまま担任でいてくれないものかと強く願っていました。
こうした先生との思いでは私の胸に深く刻まれ、8歳の私の人生を鮮やかに彩ってくれました。30年以上経った今でも、先生の名前や顔をはっきりと覚えています。

今じっくり振り返ると、先生は「その時の私達の瞬間」をとても大切にしてくれていたのだと感じます。カリキュラムで決められた「未来のためにこうするべき」ではなく、8歳という時期に考えられて感じられること、それを存分に味わうということをさせてくれました。
また、自分自身の頭で考え、自分自身の心で感じ、行動に移すことの大切さも教えてくれました。それは未来を向いているだけの教育では得られない、人生を豊かにする人間を育てる教育です。これが私の中に息づいており、同じような体験をと勝手に望んでしまっているのでしょう。
息子が中学受験に臨む際の学校選びでも、私は大学進学実績を強調する学校よりも、多感な時期に学校生活のその瞬間瞬間を大事にする考え方が根底にあり、子どもたちの自主性を重んじる学校を選択肢に挙げていました。もちろん最後に選ぶのは子ども自身ですが。

先生という存在は、子どもにとって親の次に影響をもたらす大人だと思っています。
それは一緒に過ごす時間の長さという物理的な側面もあるでしょうし、何より子どもがその姿を通して社会を見る、ある種のフィルターになっているからではないかとも思います。
中学に入学して半年たった息子は、毎日楽しそうに先生とのやりとりや特徴を話してくれます。また小学校の高学年で通っていた塾の先生の事もいまだによく息子の話に出てきます。個性的な先生が集まった塾でしたし、そこの先生たちから放たれた授業内容とは関係なさそうな言葉の数々について「そういうのが案外大事だったんだよね」と、ステージが変わった今でも強烈なインパクトを残してくれているようです。

こうして彼の話を聞いていても、先生とは子どもにとってなんと大きな存在だろうと改めて気づかされました。私の子どもへの向き合い方に影響を与えたかつての先生のように、子どもたちにも記憶に刻まれて人生に彩りを添える先生に出会ってほしいなぁと考えながら、今日も学校の話を聞いて
います。
自分の過去と子ども達の今に思いを馳せたところで、桜井さんにタスキをお渡しします。

神奈川県/秋岡美奈子 





2021年10月18日(月) No.534 (日記)

No. PASS